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本領発揮(7)

「……できた……」 一気に肩の力抜けた。 ひと針ひと針、こんなに思いを込めて仕上げた物は今までかつてなかった。 嬉しい。達成感がハンパない。 満さん、これ見てなんて言うかな。 「取り敢えず聡子さんに見てもらわなきゃ。」 立ち上がろうとしたその時 「檸檬さん、入ってもよろしい?」 聡子さんっ! 「はっ、はい!どうぞ!」 聡子さんはすっと入ってくると、俺の顔と浴衣を交互に見て 「見てもよろしいかしら?」 「はい。お願いしますっ。」 出来上がるのを見計らっていたのか。 広げて丹念にチェックして、また元通りに畳み直した。 そして俺の顔をじっと見つめて 「檸檬さん、頑張りましたね。」 と言った。 それを聞いた瞬間、俺の中で何かが弾けて、気が付くとぽろぽろ涙を溢していた。 聡子さんはエプロンのポケットからそっとハンカチを取り出すと、俺の顔を優しく拭いてくれた。 「あなた、意外と泣き虫なのね。」 「あっ…すみません。」 「ふふっ、いいのよ。 満様もきっとご満足されると思うわ。 檸檬さん、これ。」 手渡されたのは白紙で巻かれた何か。 「開けてご覧なさい。」 ぐい、と押し付けられたそれを言われるがまま開けていくと…… 「これは……」 淡いグレーの生地に薄い紫の糸が細かく編まれた……浴衣地! 今仕上げた満さんの物と…まさか色違い!? 聡子さんの意図が分からなくて、驚きを隠せないまま見上げると、聡子さんは微笑みながら言った。 「そう。満様に仕立てた物の色違いよ。 これはあなた用に作りなさい。」 「聡子さん、どうして」 「この子達は(つい)で織られた物なの。 どれだけ時が経ってもやっぱり一緒にいたいのね。 だからこれは、檸檬さん、あなたの所に行くべきなの。 明日からは自分の浴衣を縫いなさい。 出来上がったら教えて頂戴。 それまでは、こちらの家事を免除します。 お夕飯もできてます。 針を片付けたらすぐにいらっしゃい。 皆んな待ってますから。」

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