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本領発揮(8)
聡子さんはくすくす笑いながら出ていき、俺はひとりポツンと取り残された。
今の……一体どういうことなんだろう。
これとこれが対?
すみれさんから譲ってもらった物の対が、どうして聡子さんの手元に?
聡子さんとすみれさんと繋がっている?
一緒にいるべき?
俺のを作れ、ってことは満さんと対になるのを認めてくれたってこと!?
頭をいろんな『?』が埋め尽くしていく。
ハッ!そうだ!
取り敢えず片付けなきゃ!
道具達にお礼を言って慌てて片付けた。
走って皆んなの元へと急ぐ。
「檸檬さーん、遅ーい!お腹空いたわよ!」
「あとで仕立て上がったの見せてよね。」
「今日もしっかり食べなさい!」
「お待たせしてすみませんっ。」
ぐるぐる巡る思考回路に邪魔されて、何を食べ何を話したかも覚えていない。
とにかく全てのことを終わらせて部屋に辿り着いた。
「はぁ…訳分かんない。」
でも、褒めてもらったことは確かだ。
引き続いて俺の浴衣も仕上げる様に、と対になる布地を渡されたのも事実。
確かお母さんの実家って言ってたよな… まさか、聡子さんとすみれさんと親戚筋?
すみれさんにLINEしてみようかな…
ピコン
満さんだっ!
『檸檬が奮闘してるのを思い浮かべて力が湧いて、大口契約を結べたぞ!
お前のお陰だ、ありがとう!
檸檬、愛してるよ。』
えっ、そうなんだ。嬉しい!
「本当ですか、嬉しいです!
俺も凄く嬉しいことがあったので、会える日まで楽しみにしてて下さい。
満さん、愛してます。」
そして。
ハートを抱えたいつものスタンプを送り合う。
嬉しくって画面をいつまでも眺めていた。
俺が頑張れば、満さんにもそのパワーがきっと届くはず。
俺達は物理的には離れ離れだけれど、心はいつも繋がっている。
満さんも、そう思ってくれていると信じてる。
寂しく乾いていた心が、じわじわと潤っていく。
俺達は……結ばれている。
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