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受け入れて認める(2)
それからの動きは早かった。
檸檬さんを本家に呼び寄せる前に、西山家と話をつけておかなければならなかった。
いつもなら使いの者をやるのだけれど、今回は私自ら赴いた。
最初コンタクトを取った時には、ご両親は相当驚いていたけれど。
そりゃそうよね。
本人から話を聞く前に、突然見ず知らずの婆さんから事の次第を聞かされるなんて。
まぁラッキーなことに、ご主人がこの辺の出身の人で、本家のことはよくご存知の上、私のことも噂で聞いていたらしく、余計な説明は不要でありがたかった。
それにしても、肝の据わったご両親だった。
どんな思いで『檸檬のことをよろしくお願いします』と頭を下げたのだろう。
お母様は『吃驚したけど檸檬が幸せになるのなら』と、涙ぐんでおられたわ。
最終的には受け入れて下さってホッとしたのだけれど。
本家での修行のことも理解して下さった。
これで堂々と檸檬さんをお預かりできる。
お話を伺う限り、今時の若い子には珍しい“いい子”のようだ。
きっと、満様の手綱をしっかりと引いてくれることだろう。
俊樹に連絡して、急遽檸檬さんを連れて来るように指示した。
順子さん達も驚きを隠せず動揺していたが、流石精鋭部隊、生活に必要な身の回りのものを短時間で全て用意してくれた。
それでも順子さんは最後まで不満そうだった。
「聡子さん…本当によろしいのでしょうか?
御隠居様は何と仰ってるんですか?」
「ええ。いいのよ。
『現当主が決めたことならそれでよし』と仰ったわ。
ですから私達もそのように受け止めて、受け入れて教えて差し上げないと。
檸檬さんは『金山満の婚約者』として扱います。
いいわね?」
「……承知致しました。」
さぁて、満様は抵抗するでしょうが、金山家に相応しい嫁かどうか、きっちりと見極めさせていただきますよ。
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