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受け入れて認める(4)
私だって意地悪をしたい訳ではない。
でも、この家を守り繋いでいかなければならない。そういう役目だ。
そのためには手段を選んではいられないこともある。
誰かに恨まれることさえ怖がってはいられない。
お局だとか鬼婆だとか、揶揄されても痛くも痒くもない。私の小さなプライドなど、とうの昔に捨ててしまった。
『守る』とはそういうことだと思っている。
心を鬼にして満様に告げる。
「満様。一時の我慢です。
お2人の将来のためですよ。」
満様は黙って俯いていた。
その両手は膝の上で固く握り締められている。
さて、満様。どうします?
その場しのぎの快楽か、生涯に渡る愛情か。
あなたが本当に檸檬さんのことを愛しているなら…お分かりですよね?
「……分かった。檸檬のことをよろしくお願いします。」
「承知致しました。」
「どうか、無理のないように。頼みます。」
「はい。それは重々。」
「虐められたりしないように…」
「はい。私がしっかり管理します。」
「体調にも気を付けてやって」
「満様!ご心配は分かりますが、全て私にお任せ下さい。
終わりましたらこちらからご連絡差し上げます。
それまではどうぞご精進を。」
頷いて顔を上げた満様の顔は、何とも言えない憂いに満ちていた。
かつてそんな顔を見たことはない。
本気なのですね。
それなら、私は徹底的にあの子をしごきます。
何処に出しても恥ずかしくない、金山家当主に相応しい伴侶となるように。
彼なら……きっと立派にやってのけるでしょう。
私のカンは結構当たるのよ。
男性にしては何でもこなしている、と報告されたけれど、どんな風に化けるのかしら。
ひょっとしたら、歴代に名を馳せる伴侶となるかもしれない。
未知数故に楽しみだわ。
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