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受け入れて認める(12)

贔屓目ではないけれど、檸檬さんのいいところが華やいで見えてくる。 自分から何かをひけらかしたりグイグイ前に出るタイプではない。 どちらかというと一歩下がって主役を立てる、そういう感じがする。 満様にピッタリじゃないの。 今まで何人か花嫁候補はいたけれど、どの子も満様というより金山の名につられていたようだった。 他の子には感じられなかったもの…それは純粋な心。 満様のことを『とてもとても大切な人』と言っていた、とすみれが教えてくれた。 そんな風に思われて、満様はお幸せだわ。 毎日LINEを交わしているのも知っている。 あの満様がよく我慢をしていること。 きっと俊樹からも何か言われているのでしょう。 檸檬さんも……慣れない環境でよくやっていると思う。 毎日のLINEが彼のモチベーションをキープしているのでしょうね。 あの3人はもう変な手出しはしない。しっかりと支えてくれるはず。 けれど、周囲にアンテナを張り過ぎて気を使い過ぎる傾向がある。 気が利くのは長所だけれど、度を越せば短所に変わる。 程々の妙を教えて差し上げないと、パンクしてしまうわ。 満様は、最近しっかりしてきたと専らの評判だ。 いいこと尽くしで私の肩の荷も下りそうだ。 立派な当主とそれを支えるしっかり者の伴侶。 これで金山の家も安泰かしら。 しかしながら。 縁とは不思議なもの。 見えない糸は繋がれ切れて、また新たな縁を結んでいく。 満様、心から思うお相手と巡り合えてようございましたね。 明日にでも浴衣は仕上がるでしょう。 そうしたら、私の持っている物を渡して…揃いの物が出来上がる頃には御隠居様もお帰りになるはず。 そうすればお目通りを済ませて、結納やらお式の準備やら……あぁ、忙しくなるわ! ワクワクする気分を胸の内に隠しながら、離れた夫にLINEを送った。

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