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受け入れて認める(13)

聡子さんから預かった反物。 キラキラと紫の小さな煌めきが跳ねる。 綺麗だ……満さんのも素敵だったけれど、これは本当に“俺のためのもの”って感じがする。 俺のところに来てくれてありがとう。 君の対になる布地は、俺の大切な人の浴衣に変身したんだよ。 だから君も…俺の浴衣に変身してもらうよ。そうしたら、ずっと一緒にいられるね。 「よろしくお願いします。」 大きく息を吐いて、ハサミを入れる。 丁寧に丁寧に、思いを込めて。 出来上がった浴衣を着て並んで歩く俺達が浮かんでくる。 「ふうっ……今日はここまで。 ありがとうございました。続きはまた明日、よろしくお願いします!」 丁寧に道具を片付けて、美味しそうな匂いの漂う台所へ向かう。 「順子さん、すみません。何かお手伝いすることありませんか?」 「あら、檸檬さん。 仕上げてしまうまでこちらのことはいいのよ。あとどのくらい?」 「そうですね…残り半分ってとこでしょうか。明日には仕上げたいと思ってます。」 「そう。じゃあせっかくだからお茶碗とお皿を出して頂戴。今夜はカレイの煮付けときんぴらと酢の物よ。」 「はい。」 もうどこに何が収納してあるかも分かる。 盛り付けに似合う器も考えて取り出した。 「いいわね。これ、盛り付けてね。」 「はい!」 やった、褒められた。 できることが増えてくる。 少しずつこの家に受け入れてもらっているようで、嬉しくなってくる。 満さん、俺、あなたに相応しい“嫁”への道を着実に歩んでいる……と思います! へへっ、自画自賛かな。 「あら、檸檬さん。浴衣はどうしたの?」 「あらあら。縫い物が先でしょ?」 朱音さんと瞳さんがやって来た。 「キリが良かったので今日はもう片付けたんです。 だから、こちらで何かすることがないかな、って。」

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