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受け入れて認める(15)

「……できた……」 流石に続けての2枚はキツかった。 でも達成感が半端ない。 道具達に渾身の想いを込めて『ありがとう』を伝えた後、そのまま仰向けに大の字でひっくり返った。 「やった…………できたよ、満さん…」 ちょっとうるっときてしまった。 ゴシゴシと目を擦り、えいやっ、と弾みをつけて起き上がると、元通りに片付けた。 聡子さんに見てもらわなくちゃ。 部屋を出て聡子さんを探していると、玄関の方からハサミの音が聞こえてきた。 あ。お花を生けてるんだ。 集中してる時に悪いかな。 戸惑いながらも見えないように柱の陰から顔を出して様子を窺っていると 「檸檬さん、できましたか?」 ひえっ 目が幾つあるんだ!? 「はっ、はいっ!見ていただけますか?」 「ここを仕上げたら行きますから、部屋で待っていて頂戴。」 「はいっ!」 ドキドキしながら聡子さんを待つ。 入りますよ、と声を掛けられて背筋が更に伸びた。 すっ、と静かに入ってきた聡子さんの前に浴衣を差し出した。 「失礼。」 満さんの時と同じように広げて丁寧にチェックして、また畳み直して返された。 「檸檬さん、頑張りましたね。」 良かった…… 全身の力が抜けていく。 それでも力を奮い立たせて、きっちりと正座した。 「恐れ入ります。ありがとうございます。」 「先の満様のと一緒にお預かりさせていただいてもよろしいかしら?」 「はい。」 「夕飯までは自由にしていいです。 今日の後片付けはあなたにお願いするわね。 明日からいつものお勤め、頼みましたよ。」 「はいっ!お願い致します!」 聡子さんは浴衣をそっと胸に抱くようにして行ってしまった。 はあっ………褒められた、んだよね? いつものお勤め…何かやらかした訳ではなかったんだ。 暫くぼんやりとしていた俺は、のろのろと部屋に戻っていった。

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