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お目通り(6)
親父達が俺に連絡してこなかったのは、聡子さんの考えがあってのことだろう。
悪いけど、俺も全く忘れていたし。親のことを忘れるって、どれだけ薄情なんだろう。
今度会ったら絶対に非難されるな。
連絡は、明日のお目通りが終わってからにしよう。遅くなりついでだ。
でも、あまりの急展開にパニックになったし、覚えることも山程あって、ここの生活に慣れるのに必死だった。満さん以外の他のことを考える余裕なんて全くなかったと言ってもいい。
ここに初めて連れてこられてから今日までのことが、次々と頭に浮かぶ。
俺なりに全力で一生懸命やってきたけど、教えてもらったこと、ちゃんと身に付いたのかな。
さっき聡子さんが『思った以上の出来栄えでしたよ』って言ってくれた。
それだけで今までの苦労が報われた気がする。
今更ながらあれこれと考えが浮かび、ふわふわとした気分のまま時を過ごした。
「檸檬様、夕食ができました」と順子さんが呼びに来た。
朱音さんが給仕をしてくれ、別室で上げ膳据え膳の夕食を済ませた。
“様”なんて呼ばれて、今までの待遇と真逆で戸惑いを隠せない。
さっきまで使っていた部屋に戻り掛けて気付き、客間へ戻った。
何か変な感じ。
ゆっくりとお風呂に入り、早く満さんに伝えたくて伝えたくてうずうずする気持ちを抑えるのに苦労する。
あっ、来た!
『檸檬、お前の笑顔を待ち受けにしてずっと眺めている。
俺の側で、こうやってずっと笑ってくれる日を心待ちにしているよ。
心から愛している。』
慌てて返信しようとするが、何度も何度も書いては消し書いては消し。
1番伝えたいことを隠して作る文はぎこちなかったかもしれない。
明日どんな顔して会えばいいんだろう。
『檸檬、頑張ったな』って褒めてくれるかな。
満さんのことだから飛んできたりして。
いやその前に。
大一番の勝負が待っている。
もう既に緊張しながら、明日に備えて布団に潜り込んだ。
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