104 / 371

お目通り(9)

正座をして待つこと数分。 ギシギシと廊下が鳴る音がして、慌てて平伏した途端にふすまが開いた。 「おやおや。 そんなに畏まらなくてもいいんだよ。 顔を上げてくれないか?」 その声にそっと顔を上げると、満さんをダンディーにした年配の男性が微笑んでいた。 お父さんだ! その横に無表情の美女が。目元が満さんそっくりだ! お母さん?めっちゃ…怒ってる!? 美人の無表情こそ恐ろしいものはない。 どうしよう……ええい!当たって砕けろだ! 「初めまして。西山檸檬と申します。 どうぞよろしくお願い致します。」 ホッ……噛まずに言えた…… 「檸檬君初めまして。満の父と母です。 突然に軟禁するような形を取って申し訳なかったね。 単刀直入に聞くけど、満の何処が良かっ」 きゃぁーっ! ドスンッ! お父さんの言葉の途中で叫び声と共に身体に衝撃を受けて倒れ、気が付くと何かがのしかかっていた。 柔らかくていい匂いのするは……お母さんっ!? 「みっ、美恵さんっ!?何してんの!? 檸檬君から離れなさいっ!美恵さん!?」 お父さんが慌ててお母さんを引っ剥がし、俺を起こしてくれた。 何だ?何が起こったんだ? 茫然としている俺に、お母さんが 「ハッ……ごめんなさいっ! 檸檬君があまりにかわいくって…だってぇ… 亀ちゃんと平野君を足して2で割った顔してるんだもーん。 写真よりずっとイケメンじゃない! こんな子がウチにお嫁に来てくれるなんて…あぁ、最高っ!!!」 俺の両手を握り締めて、にこにこしているお母さん。 お父さんが申し訳なさそうに言った。 「檸檬君…すまないねぇ。 美恵さんは若い頃からジャ○ーズの大ファンで…特に今言った2人が『推し』らしいんだよ。 私にはさっぱり分からないんだけどね。 ほら、美恵さん。檸檬君吃驚してるじゃないか。とにかく落ち着いて。ね?」 吃驚し過ぎてフリーズする俺は、息をするのも忘れて目の前の美女を見つめていた。

ともだちにシェアしよう!