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お目通り(10)

「あの…反対して怒ってらしたのでは……」 「やだぁーっ、違うのよ! あまりに想像以上にかわい過ぎてガン見してたのよ。 反対なんてするはずないでしょ!? 満が見初めて結婚まで考えてるコなのよ。 それに…聡子さんが修行を許可して、結果太鼓判を押したんですもの。間違いないわ。ね?あなた。」 話し続ける間もお母さんは俺の手を握って離さない。 その時だった。 スパーーン!!! 「満さんっ!?」「満!」 襖を蹴り破らん勢いで、息急き切って入ってきたのは、会いたくて会いたくて夢にまで見た愛おしい恋人(ひと)だった。 ずんずんと音を立てそうな迫力で俺とお母さんの前に無言で立ちはだかると、お母さんの指を俺からゆっくりと離し、俺達2人の間に割って入ると、俺を抱きしめた。 たちまち懐かしい匂いと温もりに包まれて泣きそうになった。 満さんは振り向いてお母さんを睨みつけると 「俺の檸檬に勝手に触らないように。 檸檬に触っていいのは俺だけです。」 と言い放ち、再び俺に視線を落とすと泣きそうな顔で笑った。 「檸檬、お疲れ様。よく頑張ったな。」 「満さん……」 ゆっくりと俺の頬を撫でぎゅっと抱きしめた後、お父さん達の前に正座した。 「彼が西山檸檬。 俺が心底惚れて生涯の伴侶にしたいと思っているひとです。 どうか末長くよろしくお願いします。」 俺も慌てて正座して頭を下げた。 「美恵さん、俺には異存がないんだが。 君もそうだろ?」 「ええ。檸檬君、私達は大歓迎よ! 満のこと、どうぞよろしくね。」 「はいっ!ありがとうございますっ! こちらこそよろしくお願いいたします。」 「親父、お袋、ありがとうございます! ……檸檬!」 「満さん…」 手を握り合って見つめ合う。お父さん達の前だということもすっかり忘れて、自分達の世界に入っていた。 恋い焦がれて思いを馳せ、愛するひとにやっと会えた幸せに、思わず涙が零れ落ちた。

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