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お目通り(11)

満さんに手を取られて部屋を移動する。 時々確かめるように振り返り、俺に微笑む満さん。 それに同じように微笑んで、繋がれた手にそっと力を込めると、親指で手の甲を撫でられては握り返される。 本物の満さんだ……嬉しくって嬉しくってニヤける顔を抑えられない。 通された部屋には、最初の日のように御膳がセットされていた。 用意されていた御膳は…2つ多い。 不思議に思っていると、廊下から何やら聞き覚えのある賑やかな声が聞こえてきた。 「檸檬!」 「父さん!?母さん!?どうして!?」 「聡子さんから前もって連絡をいただいていてね。 昨日満君のご両親とも正式にご挨拶をさせていただいたんだ。 檸檬、まさかお前を嫁に送り出すとは思ってもなかったんだが……おめでとう。幸せになるんだよ。 満君、不束者の息子ですが、どうか末長く側に置いてやって下さい。」 「大切な息子さんを謹んで頂戴いたします。 一生大切にします。どうぞご安心なさって下さい。」 「さぁさぁ、畏った挨拶は抜きにして祝酒といこうじゃありませんか。 さ、西山さん、どうぞどうぞ。檸檬君も、さあ!」 ご機嫌なお義父さんに仕切られて、満さんと俺は上座に座らされた。 順子さん達がお酒を注いでくれ乾杯の音頭が済むと、満さんがそっと御膳をくっ付けてきた。 俺まで座布団ごと引っ張られて倒れ込みそうになり、満さんの胸に飛び込む形になってしまう。 「俺達、くっ付いて食べたいので失礼します。」 にこやかに告げる満さんに、お義父さんが 「膝を付け合わすほどに仲良くしたいので、もっと近くに寄りますか。」 なーんて言いながら、俺達の所に自分達の御膳も運んできた。 それに合わせて俺の両親も笑いながら寄ってきて、広い広間の中央に、ちまっ、と6人が密集した。

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