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お目通り(12)

俺を抱きしめて満面の笑みの満さんは、いつまで経っても離してくれず、聡子さんに諭されてやっと渋々解放してくれた。 あー…恥ずかし過ぎる…… お義父さんは顔に似合わず親父ギャグが大好きで、ほろ酔いでご機嫌だ。『前当主』という肩書が何処かに飛んでいってしまっている。 同じくギャグ好きな俺の父さんと意気投合して盛り上がっている。 お義母さんは母さんと、きゃいきゃいトークの真っ最中。 時々『うちの檸檬が……』『うちの満なんて……』という言葉が聞こえるから、どうやら俺達のことで盛り上がっているらしい。 俺達のことなんてそっちのけで大宴会真っ最中だ。 それをぼんやりと眺めていると、満さんが 「檸檬、ありがとう。 本当によく頑張ったな。 軟禁みたいなことになってすまなかった。 俺は、お前のお陰で途中で逃げ出さなくて済んだ。 これからも俺を叱咤激励してくれるか? 俺にはお前が必要だ。 一生俺の隣にいて下さい。檸檬、愛しているよ。」 「満さん……」 とそこへ、少し赤い顔のお義父さんが 「おーい檸檬君、いちゃついてるとこ悪いが、もう結納も交わしてきたからね。 檸檬君がいなくて申し訳なかったんだけど、満が待ち切れなくて、さっきご両親に無理矢理お願いして納めてきたんだよ。 君は正式な満の婚約者だ。式の日取りは満と相談して決まったら教えてくれ。 満を諫めて持ち上げるのは君にしかできない。 これからもよろしく頼むよ。」 「えっ!?結納!?」 吃驚して交互に両親を見ると、笑いながら頷いていた。 母さんは…そっと目尻を拭っていた。 俺は急いでお義父さんの前に駆け寄り正座すると頭を下げた。 「ありがとうございます。 不束者ですが、どうぞ末長くよろしくお願いいたします。」 次にお義母さんの前へ。 同じく挨拶をして頭を下げる。

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