107 / 371
お目通り(12)
俺を抱きしめて満面の笑みの満さんは、いつまで経っても離してくれず、聡子さんに諭されてやっと渋々解放してくれた。
あー…恥ずかし過ぎる……
お義父さんは顔に似合わず親父ギャグが大好きで、ほろ酔いでご機嫌だ。『前当主』という肩書が何処かに飛んでいってしまっている。
同じくギャグ好きな俺の父さんと意気投合して盛り上がっている。
お義母さんは母さんと、きゃいきゃいガールズトークの真っ最中。
時々『うちの檸檬が……』『うちの満なんて……』という言葉が聞こえるから、どうやら俺達のことで盛り上がっているらしい。
俺達のことなんてそっちのけで大宴会真っ最中だ。
それをぼんやりと眺めていると、満さんが
「檸檬、ありがとう。
本当によく頑張ったな。
軟禁みたいなことになってすまなかった。
俺は、お前のお陰で途中で逃げ出さなくて済んだ。
これからも俺を叱咤激励してくれるか?
俺にはお前が必要だ。
一生俺の隣にいて下さい。檸檬、愛しているよ。」
「満さん……」
とそこへ、少し赤い顔のお義父さんが
「おーい檸檬君、いちゃついてるとこ悪いが、もう結納も交わしてきたからね。
檸檬君がいなくて申し訳なかったんだけど、満が待ち切れなくて、さっきご両親に無理矢理お願いして納めてきたんだよ。
君は正式な満の婚約者だ。式の日取りは満と相談して決まったら教えてくれ。
満を諫めて持ち上げるのは君にしかできない。
これからもよろしく頼むよ。」
「えっ!?結納!?」
吃驚して交互に両親を見ると、笑いながら頷いていた。
母さんは…そっと目尻を拭っていた。
俺は急いでお義父さんの前に駆け寄り正座すると頭を下げた。
「ありがとうございます。
不束者ですが、どうぞ末長くよろしくお願いいたします。」
次にお義母さんの前へ。
同じく挨拶をして頭を下げる。
ともだちにシェアしよう!