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お目通り(13)

お義母さんは俺の横に座り直し、そっと両手を包み込むと笑いながら言った。 「檸檬君、親が言うのも何だけど、外見は良くても中身はへっぽこな息子をどうか支えてやってね。 遠慮はいらないから、バシバシお尻を叩いてハッパかけて頂戴。」 『へっぽこ』……その言葉に笑うに笑えず、何と答えて良いのか分からず、頷いて肩を震わせる。 すると、繋がれた手を無理矢理離させ、背後から俺を抱き込んできた満さんが、不満そうな声をあげた。 「“へっぽこ”って何だよ、“へっぽこ”って。」 何とも情けないその声に、その場にいた全員が吹き出した。 爆笑の渦に巻かれ、お義父さんなんて転んで笑っている。 これじゃあまるで、満さんはなんだ、と皆んなが認めてるようなもんじゃないか。 確かに見た目イケメンでスパダリだけど、時々凹む姿は残念な時がある。 でもいいじゃん。人間だもん。 むう、と膨れた風の満さんと密着する背中が熱い。 笑っちゃってごめんね。 俺に巻き付いた腕を思いを込めてそっと撫でてあげた。 はっ、みんなの前だっ! 慌ててその腕から抜け出すと、もう一度両手を付いて 「西山檸檬、確かにその『へっぽこ』を承りました! 生涯を通してお支え申し上げますっ!」 途端にやんややんやの大喝采。 廊下で控える聡子さん達からも拍手が聞こえる。 何かやらかしたか?マズいことした? ちろりと満さんを見つめると 「檸檬には敵わないよ。」 とホールドアップしていた。 それからまた酒宴は続き、お開きになったのは夕方近かった。 「檸檬、また連絡頂戴ね。 しっかりするのよ。」 「分かってる。また連絡するよ。 父さん母さん、ありがとうございました。」 名残惜し気な両親を見送り、俺はもう一泊することになった。

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