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お目通り(14)

ぼんやり走り去る車を見ていると、お義母さんに肩を叩かれた。 「檸檬君、気を張って疲れたでしょ? もう遠慮しなくても良いから、ここでは自由にしていいのよ。 私、気持ち良く酔っちゃったからもう部屋に戻るわね。 お腹も一杯でもう晩御飯は入らないわ。聡子さんに伝えてあるから満と2人で食べなさい。 朝御飯は一緒に食べましょうね。 …満が蹴り飛ばしていいからね。」 最後の台詞は囁くように言われ、その意味を解した俺は耳まで真っ赤になった。 「檸檬に何言ってんだ?」 「満さんっ!」 「やーだ。何でもないわよ。ねー、檸檬君!」 「くすくすっ…はい、お義母さん!」 俺の檸檬に……と、満さんは拗ねながら俺の手を掴み歩き出した。 笑いながらひらひらと手を振るお義母さんに、苦笑いしながら手を振る。 連れて行かれたのは、満さんの部屋だった。 ドアを閉めるなり、満さんに引き寄せられた。 「満さん!?」 「…頼む……檸檬を補充させてくれ……」 ぶわりと懐かしい香りと温もりに包まれ、俺は思わず目を閉じて縋り付いた。 …やっぱり背中に回した腕の感触が違う。 さっきは気のせいかと思ったけど違う。 痩せたんだ。 会えない間にどれだけの心労があったんだろう。 満さん、これからはもう大丈夫。『西に黄色』の俺が側にいるから。 ぎゅっと力を込めてもっと擦り付くと、身体中の毛穴に満さんが染み込んでくるみたいに感じた。 とくとくとくとく 跳ねる心臓は落ち着いてくれそうにもない。 やっと帰れた。愛おしいひとの胸の中に。 2人っきりになれて、漸く心から安堵した。 どのくらいそうしていただろうか。 やっと少し離れた満さんは、俺の両頬を包み込み鼻先をくっ付け、啄むようなキスをしてくる。 そしてそれは段々と激しいものになってきた。

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