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重なる思い(2)
熱い吐息と共に唇を塞がれた。
満さんの舌先が、俺の唇をノックする。
それに応えて少し開くと、ぬるりと舌が入ってきた。
あぁ……満さんだ。俺を狂わせる満さんの味。
俺の舌を弄ぶように表面をなぞっては絡み付いてくる。
擽ったくって、いやいやと首を振ると、両頬を挟まれた。
唇をくっつけたまま
「檸檬…あぁ…俺の檸檬…愛してるよ、もう離さないから…」
と囁いてくる。
頭がぼおっとしてきてやっと頷く俺は、満さんの胸元にしがみ付く指に力を込めた。
ところが満さんは、ゆっくりとその指を外していく。
戸惑う俺に気付いたのか
「ちゃんと俺を抱きしめて。」
と、自分の腰に俺の腕を巻き付けた。
さっきよりももっと密着した。
いつものフレグランスと満さんの体臭が混じった俺の好きな匂いが、鼻腔を擽る。
思わず
「満さんの匂い…」
と声が溢れた。
それを耳にした満さんは
「もっとダイレクトに嗅いでみるか?」
なんて笑っている。
やだなぁ、その言い方、オッサンみたいだよ。
クスクス笑う俺の腕を掴むと、バスルームに直行した。
靴!靴履いてるっ!
そんなことにもお構いなしで、俺の服を脱がせにかかる。
「待って!このスーツは大切なんですっ!
俺がお世話になった人が心を込めて縫ってくれた物だから、ぞんざいな扱いしないで!」
満さんは俺に軽いキスをすると
「分かった。」
とひと言だけ言い、本当に丁寧にボタンを外し俺を素っ裸にした後、バスタオルを纏わせ、スーツとネクタイを持って出て行った。
そしてすぐに戻ってきた満さんも一糸纏わぬ姿だった。
やっぱり…線が細くなってる。
「満さん…痩せちゃいましたね。ご飯ちゃんと食べてたんですか?」
満さんは俺を抱き寄せ、甘えるようにゆらゆらと左右に揺れた。
「ん?一応な。
でも檸檬に会えない日々は長くて辛かった。
何を食べても美味しくない。
何を見ても何を聞いても感動しない。
そんな日常だったよ。」
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