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重なる思い(8)
その後のことは…ほとんど覚えていないけど…
目が覚めたら、カーテンから光が差していて。
横にいるはずの愛おしいひとの姿はなくて。
微かにコーヒーとベーコンの焼けたいい匂いがしてきた。
お腹空いた。
何時なのか確認しようと身体を捻った途端に、ビキビキと腰を走る痛みと全身の怠さ。
喉の痛みと。
尻の間に何かが挟まっているような異物感と。
あぁ、ヤバい。何だこれ。
俺、やっと満さんと愛し合えたのに、意識ぶっ飛んで記憶がないや。
何だかやたらに感じちゃって頭真っ白になって…無茶苦茶恥ずかしいセリフを言っちゃってたような…『キモチイイ』しか覚えてない…
ふと、布団から出ている腕に、無数の赤い斑点を見つけてギョッとした。
恐る恐る布団をめくって見ると、身体中に虫刺されみたいな痕がびっしりとついていて、思わず目を背けた。
これは…キスマークってやつか!
一体どれだけついてるんだ!?
よいしょ、と腰を庇いつつベッドから降りて、見える範囲のところに視線を走らせた。
「うわぁ……」
――絶句。
表も裏も、赤い斑点だらけ。
特に腿の内側の、際どいところなんてヤバい。
暫し茫然と立ち尽くしていると、そっとドアが開いた。
「檸檬っ!」
纏わり付く大型犬のような満さんは、俺の側に飛んで来て抱きついた。
その反動で、俺達はベッドに倒れ込み、ぎしぎしと鳴るスプリングに揺られていた。
その間にも、満さんは俺を強く抱きしめて顔中舐めんばかりのキスの雨を降らせている。
「んっ、ちょっ、みつ、るさんっ、ま、ってって、ば。」
熱烈大歓迎なのは分かる。
ないはずの耳と尻尾が勢い良く揺れているから。
だけど、俺はまだ真っ裸なんだ!
「満さんっ、満さんってば!」
「へへっ、檸檬おはよう。」
あー…ダメだ……この嬉しそうな顔を見たら…叱れない……
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