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重なる思い(9)
べりりと満さんを引き剥がし、やっとのことで下着とパジャマを身に付けた。
そしてダイニングテーブルに向かい合って座り…
心から愛するひとに、蕩けるような瞳で見つめられている。
夕べ散々弄られてイかされた、あらぬ所がキュンと疼いてしまいそうになる。
ヤバい。
慌てて残像を頭から追い払う。
お腹が空いているのに、中々喉を通っていかない。
食べにくいったらありゃしない。
「満さん。」
「何だ?」
「そんなに見つめられたら恥ずかしくって食べられません!」
「そうか?俺は何ともないけど。」
「うーっ…だから、あーっ、もう」
ダメだ。
話が通らないどころか耳の中に入っていない。
何を言っても無駄だ。
俺は諦めて、ただひたすらに咀嚼して飲み込んだ。
もぐもぐもぐ…ごくん…もぐもぐもぐ…ごくん
皿が空っぽになる頃には、何とか空腹も収まった。空腹が、というより胸が一杯だったのだ。
コーヒーカップの底が見え、人心地ついた俺は、ようやく満さんの顔をまともに見ることができた。
「ご馳走様でした。」
「もういいのか?」
「はい!お腹一杯です!」
「檸檬…こっちにおいで。」
満さんは俺の手を取ると、ソファーに連れて行き自分が先に座ると、俺にも座るように指差してきた。
それは…自分の膝の上。
くいくいと手を引っ張られ、気付いた時には満さんの膝の上に馬乗りになるように座っていた。
「ほら檸檬、もっとこっちにおいで。」
満さんは、俺の腕を自分の首に絡ませると、そっと抱きしめてきた。
昨日からどれだけ抱きしめられているのか分からないくらいに。
もう二度と離すもんか、とそのオーラが語っている。
「…満さん…」
少し掠れた声で名前を呼んだ。
髪の毛を撫でながら耳元で
「何だ?」
と優しく問われる。
「満さん…満さん…」
会えない間もそうだったけど。
再会した時から伝えたいことは沢山あるのに、一晩愛を交わした後も、溢れる想いが強すぎて言葉が上手く出てこない。
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