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重なる思い(10)
満さんは俺の背中をそっと撫でてくれる。
「檸檬…そんなに俺が欲しいのか?」
「ちがーーーうっ!
違う、違う、ちがーーーうっ!」
「そんな全力で否定しなくても……」
途端に寂しそうな顔をする。
また眉間に皺が寄って、口がへの字になっている。
俺はその皺をすりすりと撫でながら
「違いますって!…これ以上は無理です!…俺、動けなくなる…」
「そうか……残念。
で?どうしたんだ?何かしてほしいのか?」
「……違います…言いたいこと、伝えたいこと、あり過ぎて……胸が詰まって何から話せばいいのか分からなくって……」
「れーもーんー。
俺達はもう、これからずっと一緒なんだ。
思いつくまま、何か話したくなったら話せばいい。無理に伝えようと思わなくてもいい。
こうやって…お互いの温もりを感じていたわり合って…愛し合おう。」
そしてまたぎゅっと抱きしめてくれた。
頭に手をかけられ、誘導されるように満さんの肩に顎を乗せると、髪の毛を撫でてくれる。
その手が心地良くて、満さんの肩に甘えるように頬を擦り付けた。
「……檸檬…お前のいない毎日は色褪せて見えたよ。
こうやってお前を抱きしめるのを夢見て…耐えてきたんだ。
本当に、本当に俺の元に帰ってきてくれたんだよな?
もう何処にも行かない、って約束してくれよ。
檸檬なしじゃ俺はもう生きていけないんだ。」
俺は顔を上げて満さんを見つめる。
「満さん……」
「愛している。お前に出会えて良かった。
俺を強くしてくれる唯一の存在…檸檬、愛してるよ。」
「満さん……」
こんな時、気の利いた台詞のひとつでも出てくればいいのに。
名前しか呼べない。
もどかしげに唇を噛む俺に、満さんはキスをひとつ落として言った。
「檸檬、愛してるよ。」
啄むようなキスから、やがてそれは濃厚な気が遠くなるものに変わっていった。
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