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重なる思い(12)

明け方。 俺は目を覚ました。 ベッドに人の気配があって、一瞬思わず声をあげそうになったが、それが満さんだとすぐに気が付いた。 そう。隣には規則正しく寝息を立てる恋人がいた。 もうここは本家じゃない。帰ってこれたんだ。この人の元に。 込み上げてくる思いを叫びそうになり、深呼吸して少し落ち着いてから、彼を起こさないようにゆっくりと布団から抜け出した。 昨日散々抱かれた身体は、あちこち痛むものの、動かないことはなさそうでホッとした。 取り敢えずシャワーを浴びようと、ベッドの下に落ちていた下着とパジャマを拾い上げ、バスルームに向かう。 鏡を見てため息。 キスマークが身体中鮮やかに散らされている。 何だか少し増えている気がする。 見ないフリ見ないフリ。 少し熱めの飛沫を浴びて徐々に覚醒していく頭と身体だが、婚約したという実感がまだ湧いてこない。 今までの修行の日々がフラッシュバックする。 これは夢なんじゃないのか。 夢ならこのまま冷めないでほしい。 なんの前触れもなく、お腹がぐうと鳴った。 考えたら食パンと目玉焼きとベーコンとサラダしか食べてない。 何も食べずに抱き合っていた訳で。 一体どれだけ盛っていたのか、思い出すだけで恥ずかしい。 何だか“後ろ”の締まりが悪いような気がしてならない。 満さんの形のまま広がっている感じがする。 思わずそこに指を当てた。 ……良かった。ちゃんと閉じている。 取り敢えず綺麗にして、とはいえ、満さんが後始末をしているのは間違いなさそうだ。 その間、意識がなかったのは幸いなのか。 素面なら恥ずかし過ぎて暴れていたかもしれない。 手早く身支度を済ませると、キッチンへ向かった。 水を飲んで落ち着くと、冷蔵庫の中を確認する。 へぇ…意外とちゃんと自炊していた風だ。まさか誰か通っていた、なんてことはないだろうな? 食材もそこそこ揃っている。

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