125 / 371

重なる思い(14)

腰をごりごりと押し付けられる。 硬いモノが当たるが、気付かないフリをする。 「満さん、すぐ食べれますから、これ運んで下さい!」 あー、とか、うーっ、とか何やらゴニョゴニョと呟いていた満さんは、それでも大人しく俺の言う通りに湯呑みや箸をテーブルにセットしてくれた。 聡子さん達に感謝しつついただいたけど。 本家で修行したことが蘇ってきて、色んな感情に潰されそうになって、ついつい箸も止まりがちになった。 満さんは無理に聞き出そうともせず、俺のペースに合わせて食事を終えた。 片付けは満さんがやると言って聞かなくて、結局お願いしてしまった。 それを見ながら、思い切って聞きたかったことを口にした。 「満さん、ちゃんと自炊してたんですか? 冷蔵庫に食材がきちんと入ってた…凄いですね。 ……まさか、誰か通ってたとか……」 ついつい、咎めるような口調になってしまった。 「檸檬と出会う前も、自分で作れる時はできるだけ作ってたんだよ。 だからある程度の物は揃えてあるし作れる。 ただ、檸檬がいなくて落ち込んでメンタルヤバくて食欲がない時は、俊樹が心配して来てくれてたんだ。 アイツは何でもプロ級の腕前なんだよ。 …それでも食べることはできない日もあったな…」 「満さん、だから痩せちゃったんだ…」 「でも、もう大丈夫だよ。 こうして檸檬が俺の側にいてくれるんだから。 檸檬、ひょっとして妬いてくれてるのか? ふふっ、嬉しいな。そんな風に思ってくれてるなんて。 いつ引っ越してくる? 今日?明日?明後日?」 「えっ、そんなせっかちな!」 「だって俺達、もう婚約したんだよ!? 檸檬の部屋だって空けてあるんだ。 業者も手配するから、要らない物は処分してくればいい。」 「でも…」 「…檸檬は俺と暮らすのは嫌なのか?」 「そうじゃないです!でもあまりにも急で…… 何もかもが急に進み過ぎて、ちょっと…怖いんです…」

ともだちにシェアしよう!