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重なる思い(14)
腰をごりごりと押し付けられる。
硬いモノが当たるが、気付かないフリをする。
「満さん、すぐ食べれますから、これ運んで下さい!」
あー、とか、うーっ、とか何やらゴニョゴニョと呟いていた満さんは、それでも大人しく俺の言う通りに湯呑みや箸をテーブルにセットしてくれた。
聡子さん達に感謝しつついただいたけど。
本家で修行したことが蘇ってきて、色んな感情に潰されそうになって、ついつい箸も止まりがちになった。
満さんは無理に聞き出そうともせず、俺のペースに合わせて食事を終えた。
片付けは満さんがやると言って聞かなくて、結局お願いしてしまった。
それを見ながら、思い切って聞きたかったことを口にした。
「満さん、ちゃんと自炊してたんですか?
冷蔵庫に食材がきちんと入ってた…凄いですね。
……まさか、誰か通ってたとか……」
ついつい、咎めるような口調になってしまった。
「檸檬と出会う前も、自分で作れる時はできるだけ作ってたんだよ。
だからある程度の物は揃えてあるし作れる。
ただ、檸檬がいなくて落ち込んでメンタルヤバくて食欲がない時は、俊樹が心配して来てくれてたんだ。
アイツは何でもプロ級の腕前なんだよ。
…それでも食べることはできない日もあったな…」
「満さん、だから痩せちゃったんだ…」
「でも、もう大丈夫だよ。
こうして檸檬が俺の側にいてくれるんだから。
檸檬、ひょっとして妬いてくれてるのか?
ふふっ、嬉しいな。そんな風に思ってくれてるなんて。
いつ引っ越してくる?
今日?明日?明後日?」
「えっ、そんなせっかちな!」
「だって俺達、もう婚約したんだよ!?
檸檬の部屋だって空けてあるんだ。
業者も手配するから、要らない物は処分してくればいい。」
「でも…」
「…檸檬は俺と暮らすのは嫌なのか?」
「そうじゃないです!でもあまりにも急で……
何もかもが急に進み過ぎて、ちょっと…怖いんです…」
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