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重なる思い(15)
そう。
トントン拍子に物事が運び過ぎて怖いのだ。
だって、あの聡子さんに認められて、男同士だというのに、満さんのご両親にもウチの親にも快諾されて、俺の知らない間に結納まで済んでいて。
大好きな大好きな満さんの婚約者として…生涯の伴侶として、一緒に暮らしていけるなんて夢のようだ。
もしかして、反動で何か良くないことが起きるんじゃないかって…怖い。
幸せ過ぎて怖い、ってこういうことを言うんだと思う。
言いあぐねて口をつぐんでしまった俺の頭を満さんは微笑みながらポンポンと撫でてくれる。
「心配するな。
物事がスムーズに運ぶ時は『それでOK』のゴーサインなんだよ。
もし、俺達の関係が認められないものなら、こんな結果にはなっていない。
勿論、檸檬の頑張りが大きく影響してるんだけどね。
檸檬は、優しくて真面目で頑張り屋さんで人の気持ちを大切にできる子だ。
この先、俺達の前にどんな無理難題が立ちはだかっても、お前と一緒なら、笑いながら越えていける自信しかないんだ。
でも、心配事なんかはひとりで抱え込んじゃダメだ。
どんなことでも俺に伝えろ。教えてくれ。
それがどんな些細なことでもいい。
俺は檸檬の笑顔が好きなんだ。
それを守るためならどんなことでもできる。
なぁ、檸檬。
俺達、幸せになろうな。」
「満さん……」
俺は愛おしい恋人の胸に飛び込んだ。
背中に腕を回して抱きしめる。
好き。好き。大好き!
満さんの胸にグリグリとオデコを擦り付ける。
まるでマーキングみたいな行動に、満さんが喉奥で笑っているのを感じるけど止められない。
満さんはそんな俺を抱きしめ背中に手を当ててると、落ち着くようにと撫でてくれる。
その温もりが気持ち良くて、ずっと撫でていてほしくて、摩擦でオデコが熱くなるまで擦り続けた。
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