129 / 371

証(3)

社長はぶつぶつ文句を言いながらも、赤石部長がノックするまでに全てのデスクワークを終えていた。 流石、仕事はできるひとだ。 「失礼します。」 赤石部長……はぁ…相変わらずのイケメンぶり。顔面偏差値の高い社内でも、トップ5に入るだろうな。 最近何だか艶が増しているような……プライベートも充実してるんだろうな……この人の奥さんってどんな人なんだろう。 「西山君。」 「はっ、はいっ。」 「おめでとう!社長の手綱をしっかりと締めといてね。」 「うえっ!?」 「あ、大丈夫。全部知ってるから。」 ぼふんと真っ赤な顔になった俺を残して、笑いながら肩を叩いて行ってしまった。 知ってる…知ってるって…… 「くーろーはーらーさぁーーんっ!」 「どうした?」 「あっ、赤石部長が…『おめでとう』『全部知ってる』って……」 「あぁ、なーんだ。うん、知ってるよ!」 「えっ、何で、どうして」 「彼もだから。」 「は?」 「彼のは、人事の若林弘毅。 いやぁ、うちの会社は…くすくすっ、ねぇ。 営業の1も2も賑やかだし。 (トップ)|だと伝染するのかな。あははっ。 あ、気にしないでね! 書類上のことは赤石部長が操作してくれるから他人にはバレない。 多分その辺の打ち合わせに来たんだよ。 全く、満はせっかちなんだよ。西山君はまだ籍入れてないのにさ。 まぁ、あんな奴だけど末長くよろしくしてやってね。 あ、俺ちょっと用事済ませてくるから、出掛けるしよろしく!」 余りの衝撃にクラクラする。 部長も!?嫁は人事の若林!?営業1も2も…って…誰だ!? 黒原さん以外の人にバレてることや、他にも同性カップルがいることに動揺して、その後は申し訳ないことに上の空で仕事にならなかった。 満さん……もとい社長は黒原さんがいないのをいいことに、俺を思いっ切り抱きしめてから外出した(キスもされた)。 「西山君、西山君、こっちこっち!」  帰ってきた黒原さんに手を引かれ奥の部屋に連れて行かれた。

ともだちにシェアしよう!