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証(5)

ひとりご機嫌な黒原さんは 「とにかく! あの満を叱咤激励して転がせるのは、西山君、君しかいないんだからね! 我が社運も君の腕にかかってるんだ!」 「そんな大袈裟な……」 「ホントホント。マジもんだよ! まぁ、それにしても。アイツが心から愛する人に巡り合えて、本当に良かった。 西山君、満の愛を受け止めてくれて、本当にありがとう。 どうか幸せにね。」 最後の方は涙声だった。 頷きながら、俺も貰い泣きしそうになっていた。 名家の跡取りプラス社長という重責。 それに群がる私利私欲の輩。 満さんに心休まる日はあったのだろうか。 でも、もう大丈夫だ。何たってラッキーアイテムの俺がずっと側にいるんだから。 ん? いや、ちょっと待てよ…… 結婚して満さん家と縁組したら、俺は『西に黄色』じゃなくなるじゃん! ヤバい、マズい! 「黒原さんっ!」 「うわっ、何!?」 「俺、満さんと結婚できませんっ!」 「はあっ!?何言ってんの!?何で!?どうして!? 俺何かした!?何か言った!?」 「だって……『西に黄色』じゃなくなる…ラッキーアイテムじゃなくなるっ!!!」 「はぁっ!?」 「西じゃなくなるっ!」 「あー……それか。心配ない!大丈夫だ!」 「へっ!?」 「黄色よりもっと強力。金色になるんだよ!? 『金山檸檬』 字面もインパクトも最強じゃんか! すっげぇな、金色に光る檸檬だよ。 黄金の果実…最高じゃん!」 目の前に、たわわに実る檸檬畑が浮かんだ。 それは陽の光を浴びて、キラキラと輝いていた。 「黄金の…果実…」 「そうだよ!パワーアップしてるじゃないか! 西に黄色どころの騒ぎじゃないよ! …まぁ、通常は林檎を指してるんだけどさ。 いや、檸檬だって同じだよ! だ・か・ら! 気にしないでぜーんぜん平気だから!」 何だか上手く言いくるめられたような気がするけど…『黄金の果実』と言われたら嬉しくなってきた。

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