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証(7)

助手席に押し込まれた俺は、別に約束した覚えもなく尋ねた。 「満さん、何処に行くんですか?」 「ふふん。ナイショ。」 満さんは車のギアを入れると、俺の右手を握ってきた。 「運転中は危ないですから、離して下さい。」 「………………」 無視された。代わりに手をぎゅっと握られた。 何を聞いても教えてくれない。 諦めて、手を握られたまま真っ直ぐ前を向いた。 そろそろ夕方のラッシュにかかる道は混み始め、皆(せわ)しなさそうに動いている。 車は渋滞に巻き込まれつつも、ある一件の店の駐車場に滑り込んだ。 「……『jewelry(ジュエリー) halfmoon(ハーフムーン)』!?」 訝しげに尋ねる俺に、にっこりと微笑んだ満さんは、素早く車を降りると助手席のドアを開け、俺の手を取った。 首を捻りながらも促されるまま車を降り、エスコートされて店内に入った。 ちょっと待って!これって女性にするみたいな!? 「いらっしゃいませ。」 あわあわする俺の前に、渋いイケメンが現れた。 満さんは俺の腰に手を回したまま、堂々と言い放った。 「予約していた金山です。 婚約指輪と結婚指輪をお願いしたいので、相談に乗っていただけますか?」 「お待ちしておりました。勿論です。ようこそいらっしゃいました。 こちらへどうぞ。」 ゆっ、指輪っ!? 席に案内され、彼が名刺を差し出した。 「私はここのオーナーの新藤(しんどう) (すすむ)と申します。 この度はおめでとうございます。 数あるお店の中から、jewelry halfmoonをお選びいただきありがとうございます。 できる限りご要望にお応えさせていただきますので、何也とお申し付け下さいね。」 満さんはそれを受け取りつつ、自分の名刺を差し出した。 「私は金山満と申します。 この度ご縁がありまして彼と結婚することになりました。 ここなら満足のいくものを揃えて下さるとお聞きしていますので、是非にと思いまして。 分からないことだらけなので、いろいろと教えて下さい。」

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