134 / 371

証(8)

「あぁ、金山さんのところの…そうですか…ご立派になられて…お小さい時に一度お会いしてるんですよ。 お父様達にもご贔屓にしていただいてるんです。 これは嬉しいご縁ですね。 しっかり勉強させていただきますから、ご安心を。」 「そうなんですか。 父から『指輪を買うならここに行け』と言われていたので」 指輪、指輪、指輪…… 婚約指輪に結婚指輪!? ここに来るために大急ぎで定時で上がってきたのか!? 満さん……所有の印を選びに来たんだ… んんっ、待てよ!? 指輪って貴金属…めっちゃ高いよね!? 給料の3か月分!?とか聞いたことあるけど……そんな高い物、俺には必要ないよ!? スーツの裾を引っ張って、恐る恐る満さんを見ると、 「心配するな。余計なこと考えずに俺に任せておけ。」 と、頭をポンポン撫でられた。 「そんなこと言っても…そんな、そんな高い物を俺なんかに……」 ごにょごにょと呟くと、それを聞いていた新藤さんが 「ひょっとしてお話もせずにお越しになったのですか? それは吃驚なさいましたよね。 でも、指輪って特別なんです。 贈る方も贈られる方も身の引き締まる緊張感とでも言いましょうか。 『永遠の愛』とか『2人の決意』それに『財産の一部』とか言われますが…“ただの輪っか”なんですけど、物凄い勇気と安心感を貰えるんです。 指輪を贈る習慣は、遡ること古代ローマ時代から続いてるんですよ。 お相手が側にいなくても、いつも一緒にいる気がする、って皆さんよく仰います。 お揃いの物を持ってるっていいですよね。 それに『虫除け』になりますから。ははっ。 特に同性同士のお客様には必需品のようで、好評いただいていますよ。 例え指に嵌ることができなくても、ネックレスにしたり。 お値段のことはご心配なく。 お任せ下さい。」

ともだちにシェアしよう!