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証(9)
新藤さんの丁寧で優しくて真摯な言葉が、ゆっくりと俺の緊張を解していく。
満さんは俺の手を握ったまま、俺をじっと見つめている。
その目は『心配するな。俺を信じろ。甘えて委ねてくれ。何もかも俺に任せろ。』って伝えてくる。
甘えてもいいのかな。
2人の思いを形にしようとしてくれてる、満さんの思いを受け止めてもいいのかな。
『永遠の愛』をずっと身に付けれるなんて、こんなに嬉しいことはないんだけど。
でも俺、貴金属類には全く興味がなくて、全然価値なんて分からない。とっても高価なモノっていうことだけは分かる。
「檸檬。」
宥めるような声音で名を呼ばれた。
「難しく考えるな。
俺達が人生を共に歩む伴侶だという証を選びに来てるだけのこと。
お前は遠慮し過ぎる。
少しくらいはダンナらしいことをさせてくれないか?
俺はお前のモノだという以前に、俺がお前のモノだ、という証がほしいんだ。」
「え…満さんが俺のモノ!?」
「そうだ。俺はお前だけのモノなんだよ。
だから、指輪で縛りたい縛り付けられたい。
変な虫が檸檬に寄り付かないようにな。」
くっくっと、喉奥で笑いを噛み殺した満さんは、甘く囁いた。
「さぁ、早く俺をお前の愛で縛り付けてくれよ。」
カッ、と全身が熱を吐いた。
俺が!?俺が満さんを縛る!?
改めて目の前の伴侶を見た。
少し首を傾げて、主人の命令を待つワンコみたい。かわいいっ!
切れ長の目が『檸檬、早く早く!』と誘っている。
本当に?本当に俺でいいんですか?
あなたを……俺の愛で縛り付けても…
「…満さん、俺で…男の俺で…いいんですか?」
「この期に及んで何を今更!
西山檸檬、お前自身がいいんだ、って何度言えば分かってくれるんだ?
ほら、覚悟決めて。もう逃がさないからな。」
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