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証(12)
ドキドキが止まらないまま、マンションの駐車場についた。
満さんは当たり前のように俺の手を繋ぎ、部屋まで歩みを進める。
いつもよりも早く感じるのは気のせいだろうか。
朝一緒に家を出て、仕事を終えて同じ家に一緒に帰る。
同じ部屋の空気を吸い、同じ料理を食べ、同じボディーソープの匂いに包まれて抱き合って眠る。
何て幸せなんだろう。
別々に頑張っていた頃が、遙か昔のように思えてしまう。
あの時間があったからこそ、お互いのことを思い合い、これからのことも考えることができたと思う。
そうでなければ、ただ思いを寄せ合い熱情に流されるだけで、しっかりと心から結び付くことはできなかったかもしれない。
やはり聡子さんの選択は間違いなかった。
カチャッ
いつの間にか玄関に引き入れられていた。
「ただいま、檸檬。」
「お帰りなさい、満さん。そして、ただいま。」
「うん、お帰り。」
くすくすくすっ
「今夜は俺がパスタを作るよ。」
「えっ、満さんが!?」
「何だ、その驚き方は。あ、言っとくけどレンチンとかじゃないからな。
俊樹が教えてくれたんだ。これだけは作れる。」
「ふふっ、そうだったんですか。俺も手伝います!」
「いいけど手を出すなよ。俺が作ってお前に食べさせたいから。」
「はい!」
鍋に水を入れお湯を沸かす。
冷蔵庫からボウルに入ったシーフードミックスを取り出してきた。
「朝から塩水につけといたんだ。」
ちょっと恥ずかしそうに、ペーパータオルで水気を拭いている。
あ、それこの間テレビでやってた生臭くならない裏技だ。
朝からって…今晩こうして作ってくれるつもりだったんだ…
有機のトマトジュースをフライパンに入れ、目分量で味見をしながら調味料を足していく。
凄い。も○みちみたい。
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