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証(16)
注文していた指輪が出来上がった、と連絡があり、終業後一緒に受け取りに行くことになった。
黒原さんは
「あーぁあぁ……西山君、とうとう物的本格的に社長に繋ぎとめられちゃうねぇ…まぁ、これで社長の独占欲と庇護欲が少し治まるといいんだけど。」
なーんて笑っている。
そんな俺は、毎朝のルーティン化している(大体出社前に家でも散々されているんだが)バックハグされている。
社長は俺に巻き付いたまま、駄々を捏ねるように身体を左右に揺らしながら黒原さんに反論する。
「うるせぇよ、俊樹。そう言うお前だって」
「社長、何か仰いましたか?」
「え…いや、何も。」
黒原さんの冷ややかな口調と態度に口籠る社長。心なしか俺を抱きしめる腕に力が篭った気がする。気のせいか?
ひょっとして……黒原さんの恋人の話は…触れてはならないことなのか?
地雷か。
本人に迂闊に聞かなくて良かった、と胸を撫で下ろした。
その日の社長は仕事にならなかった。
いくら黒原さんに叱咤激励されても、顔がニヤニヤと崩れてしまう。イケメン崩壊。
指輪でこれなら、入籍した後にはどうなるんだろう。
今から滅茶苦茶心配だ。
終業のチャイムと同時に、社長に腕を取られ拉致されるように連れ出された。
「西山くーん、また明日ねぇ〜!」
黒原さんが笑いながら手をひらひら振っていた。
あー…明日また揶揄われるんだろうな……一抹の不安を抱えながら、jewelry halfmoonへと向かう。
ま、いっか。
運転席の誰かさんは鼻歌まで飛び出す程のご機嫌さん。
俺も嬉しいけど、満さんはもっと嬉しいみたいだ。
「いらっしゃいませ!お待ちしておりました。」
ここにもいたよ、不動の渋いイケメンが。
オーナー新藤さんににこやかに迎えられて、ちょっと落ち着いた。
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