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証(19)

悶々とした気持ちを隠したまま家に着くと、リクエスト通りにハンバーグ作りに取り掛かった。 今夜は和風だし、いつもよりほんの気持ち分、味噌を多めに足した。 その間に満さんはお風呂の用意をしてくれてる。 全くできた旦那様だ。 家事分担もさり気なくやってのける。 いつの間にそんなスキルを身につけたのか。 やっぱり俺の修行中なんだろうな。 「おっ檸檬、いい匂いがする。お腹空いたー!」 「もうすぐできますよ。ご飯も多めに炊いたからお代わりして下さいね!」 俺に纏わり付き腰に手を回す満さんをやんわりと牽制しながら、ふっくら柔らか檸檬スペシャルハンバーグができ上がった。 「先に風呂…と思ったけど、我慢できない! 食べてもいいか?」 「熱々のうちにどうぞ!その方が俺は嬉しいです。」 「じゃあ、そうしよう!」 「「いただきます!」」 「……どうですか?」 「美味いっ!檸檬、また腕を上げたな。 …なぁ、修行は辛くなかったか? お前が随分と我慢をして耐えてきたのは分かってる。そしてその努力と素直さでいろんな問題をクリアしてきたことも。 今でも俺は、家のせいでお前に無茶振りばかりして、申し訳なく思ってる。本当にすまない。 けど、俺には檸檬が」 「必要なんですよね?」 「うん!」 「愛してるんですよね?」 「そうだ!」 「じゃあ、もう謝らないで下さい。 その代わり……」 「その代わり?」 「沢山『愛してる』って言ってほしいです!」 「檸檬……」 見る間に満さんの目が潤んでくる。 涙もろくなったのも離れていたせいなんだろうか? ふっ、と影が差してあったかいものに包まれた。 耳元で「愛してる」「檸檬、愛してる」って囁かれ、俺は満さんをぎゅっと抱きしめ返した。 「ごめんね」よりも「愛してる」を。 俺も、愛しています。

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