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結婚式(1)
あんなに浮かれてハッピーだった気分は束の間で……それからは怒涛の日々だった。
女性みたいにフルボディを磨きあげたり、当日のお色直しがどうとか新婚旅行がどうとか、その他にも細かなことなんか、俺は何もすることはないとはいえ、実際に式場に足を運んでの打ち合わせや、招待しない人達へのお知らせやら、お祝いの対応なんかで目まぐるしかった。
まず結婚通知の案内の数が半端なかった。
俺は小っ恥ずかしくてご遠慮申し上げたのだが、お義父さんとお義母さん(もう家族なんだからこう呼んでほしいと懇願された)から
『ケジメだよ、ケジメ。
そうすればお互いに悪い虫もつかないし、堂々と公の場所に2人で行けるから。
誰かが何か言ってきても、どーんと構えて堂々としてなさい。
雑音の処理は私達がするから。』
なーんてありがたい言葉で説得されて、各方面へ送り届けた。
その反響たるや、凄まじかった。
『金山家当主の結婚』というだけで、各方面からの問い合わせやらその他諸々が鳴り止まないというのに、追って加えておまけに相手が男の俺だということで、誹謗中傷も半端なくって、流石の俺も凹みに凹んだ。
カミソリ入りの封書が送られてきた日には、人目も憚らずに泣きに泣いた。
後々になって思い返せば、世間の当然の反応だったのだが、その時の俺は『受け入れてもらえない関係』にピリピリして、マリッジブルーを飛び越えておかしくなってたんだと思う。
そんな俺を宥めたりすかしたり、持ち上げたり甘やかしたり、満さん達は大変だったと思う。
ごめんなさい、も素直に言えなかった。
俺だって、あんなにやわじゃないと思ってたんだけど。
でも不思議なことに暫くすると、そんな嫌な出来事がピタッと止まった。
代わりにと言っては何だけど、俺達を祝福する言葉ばかり掛けられるようになってきた。
なるほど……これが金山家の力なのか……
そういえば、お義父さん達が『雑音の処理は私達がするから』って言ってくれてた…
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