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結婚式(10)

「檸檬、頑張ったな、本当に綺麗だった。 お疲れ様。」 満さんが俺の頭をぽんぽんと撫でて労ってくれる。 「満さんも凄く素敵でした。お疲れ様でした。」 不意に鼻先に、ちゅっとキスされて慌てふためく。 誰か見てたらどーすんだよっ! 「くすくすっ、失礼いたします。」 遥さんだ!見られてた!? プシュー、っと湯気が出そうに真っ赤な顔になった。 「とても和やかな素敵なお式でしたね。 おめでとうございました。 檸檬さん、緊張してお疲れになったでしょう?」 「ありがとうございました。 慣れないことばかりで…やっと緊張が解けてきたみたいで…」 「そうですよね。何たって晴れ舞台の主人公ですから。 コーヒーをお持ちしたので、ちょっと一服なさって下さい。」 「じゃあ、俺はその間に精算を済ませてきます。 遥さん、檸檬をお願いします。」 「はい、ありがとうございます。承知いたしました。」 満さんが出て行くと、遥さんがリボンの付いた白のパッケージをそっと出してきた。 「檸檬さん、差し出がましいのですが、私からのプレゼントです。 “夫様(おくさま)”だけに特別に。 旦那様が随分お喜びになるそうで、皆さんにご好評いただいている物なんです。 良かったらお使い下さいね。」 「えっ、はっ、はい。ありがとうございます。では遠慮なくいただきます。」 『旦那様が喜ぶ』?一体何だろう… 顔に“?”が現れていたのか、遥さんはニコニコと微笑みながら言った。 「お使いになると良いと思います。」 そんな話をしていると満さんが戻ってきて、そこで終わってしまった。 今夜…今夜って…一応新婚初夜になるんだよね? そこで使う物? うーん、何だかアヤシイ匂いがする。 後でこっそりとひとりで開けてみよう。 頭の中をクエスチョンマークで満たしながら、隼人さんや遥さん、スタッフさん達に丁重にお礼を言って式場をあとにした。

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