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内緒(9)
満さんは、くふくふ、と嬉しそうに笑いながら、俺の首筋に鼻を擦り付けては匂いを嗅いだり、俺を抱きしめてゆらゆら左右に揺れてみたり。
酔うとこんなになるんだったっけ?
ふふっ、かわいいじゃん!
甘える大虎。写メりたい。
取り敢えず寝かせなきゃ、と思った瞬間、ごろんとひっくり返されてのし掛かられた。
「…満さん、重たい…」
「ははっ、ごめんごめん。
じゃあ…」
「うわぁっ!」
視界が反転した。
俺は満さんの身体の上に乗っけられていた。
「満さん、離してよぉ!」
「だーめ。檸檬は俺のものだから、逃さなーい!」
「逃げないし、満さんの服が皺になるから離してっ!」
「やーだ。クリーニングしたら直るし。
……檸檬、暫くこのままでいて。」
きゅ、と力を込めてくるから、逃げ切れなくて諦めてしたいようにさせた。
俺の頭を撫でてはキスを落とし抱きしめてくる。
何でこんな甘えたになってるんだろう。
そのうち、腕の力が緩み始め、規則正しい寝息が聞こえてきた。
チャンス!
ゆっくりとゆっくりと、満さんを起こさないように時間を掛けて、絡まる腕から抜け出した。
はぁ…さっき『かわいい』と思ったことを撤回する。
それにしても…本当に整った綺麗な顔だな。
睫毛が震えてて、何だか胸がきゅんきゅんするよ。
俺、本当にこのひとと結婚したんだ…
不意にどうしようもない多幸感に襲われた。
悲しくないのにぽろぽろと涙が零れてくる。
幸せで満たされて、満さんに対する愛情が次から次へと湧いてくる。
ひとを愛する、ってこういうことなんだろうか。
慌ててティッシュで目を押さえる。
「檸檬。」
慌てて顔を上げると、寝ている筈の満さんが起き上がって俺を見つめていた。
真顔で、すっ、と俺に近付くと親指で頬の涙を拭い取られた。
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