181 / 371

内緒(11)

ちゃんと目覚ましで起きて、腰を摩りながらも、ちゃんとキッチンに立っている。 完全に抱き潰されなくて良かった。とはいえ、喉がビミョーに痛い。 今日は静かに黙っていよう。黒原さんには揶揄われるのが目に見えているんだけど。 今日のお弁当のおかずは、夕べ作っておいた里芋の煮っ転がしと、卵焼き、唐揚げに、ピーマンとジャコの炒めたやつ。それに茹でたインゲンとミニトマト。 白ごはんにふりかけを掛けて、真ん中にどどんとでっかい梅干しを乗せた。 ふふん。どんなもんだい。 檸檬様特製の愛情弁当だぜ! 「れーもーん、おはよう…うー、頭痛い…」 「満さん、おはようございます! あれ?二日酔い?」 「うーん、そんな感じ…それにおでこも痛い…何でだろう…」 俺はハタと気付いてしまった。 おでこのそれは…俺のデコピンだ…そんなに強くした覚えはないのに…しまった…黙っておこう。 「酔って何処かで打つけたんじゃないの? さ、ひと口でもいいから食べて!」 「ん…味噌汁飲む…」 「はいはい。」 デコピンの後ろめたさで甲斐甲斐しく世話を焼いてあげていると、満さんは少し復活したようだった。 「お、弁当美味そう!昼休みが楽しみだな。 今日は一緒に食べれるぞ。」 「黒原さんに冷やかされそう…」 「ふふっ、見せつけてやれ。これで刺激を受けて、アイツも動けばいいんだけど…」 「え?黒原さん両思いの恋人がいるんじゃないんですか?」 「うーん…両片思い…と言った方が分かりやすいのか…中々思うようにはいかないみたいだな。 早く何とかすりゃあいいのに。 まぁ頃合いを見て、けしかけるとするか。」 「…そうなんだ…上手くいくといいですね。」 「あぁ。アイツには世話になりっぱなしだから、幸せになってもらいたいね。 俺が檸檬と結婚できたのもアイツのお陰もあるから。」 満さんはとても優しい目をして呟いた。

ともだちにシェアしよう!