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内緒(12)
あの黒原さんが両片思い!?
いそいそと定時で帰って行く後ろ姿を思い出した。
あんなに優しくてマメで頭が良くって気配りの凄いひとに思いを寄せられるって、お相手はどんな素敵なひとなんだろう…
俺達を後押ししてくれたように、何か俺にもできることはないんだろうか…
黙ってしまった俺を満さんが怪訝そうに見つめている。
「檸檬、どうした?」
「あの…黒原さんの恋が成就するために、俺にできることって何かないんですか!?
俺も…こうやって大好きな満さんと結ばれて結婚できたのも、黒原さんのお陰だと思ってます。
だから絶対に幸せになってほしいんです。」
「檸檬、ありがとう。
直接俊樹にそう伝えてやってくれないか?
俺が何か言うと反発するし、アイツなりのプライドがあるらしくてな…」
「はい!俺でお役に立てるなら!」
満さんにそっと抱き寄せられた。
「俺の檸檬は優しいな。
お前のそういうところも大好きなんだ。」
「満さん…」
甘いムードに流されて唇が触れようとしたその時
『7時30分!7時30分!』
テレビから時間を知らせる惚 けた声が聞こえた。
「はぁ…せっかくいい雰囲気だったのに…
檸檬、続きは今夜…な。」
「………」
満さんの蕩けそうな瞳に見つめられると、YESともNOとも返事のしようがなく黙っていると軽く唇にキスをされた。
不意打ちで残された唇の熱に戸惑いながら、名残惜し気に緩んだ満さんの腕から抜け出して出勤の支度に取り掛かった。
“今夜も”って“も”は無理っ!俺の身体が持ちませんっ!
それに俺、帰りに進藤さんのお店に寄らなくちゃ、だし。
反応しそうになる身体を宥めながら、心の中で文句を言いつつ、着替えを済ませた。
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