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内緒(14)
別に何か悪いことをしている訳ではないのに、とっても大切なひとに内緒事をするというのは、ワクワクする反面、何となく気が引けて軽い罪悪感を覚えてしまう。
オマケに黒原さんも巻き込んで、トータルの勤務時間は変わらなくても、仕事上迷惑をかけていることには間違いない。
そのせいで満さんのスケジュールも大幅に変更してしまった。
これは俺が、満さんの伴侶で、秘書課にいるからこそできる訳で。
プライベートなことで甘えてしまっている自分に気付いて落ち込んだ。
「黒原さん、すみません。
俺の個人的なことで色んなことでご迷惑をお掛けしてしまって…
あの、何とかするので変更前の通りでお願いします!」
「あのね、自分で無理だから俺に相談してきたんだろ?
俺は、満にも檸檬君にも幸せになってほしいの。満、絶対に喜ぶからやり通してよ。
仕事のことは打ち合わせ通りで大事だから。
それにさ、実は俺も興味があるんだよ。
だから落ち込んだり、俺に悪いなんて思わないで。
とにかく誕生日に間に合うように仕上げないと!」
優しく諭すように言われてホッとした。
「ありがとうございます!
本当に申し訳ありません!」
「絶対にバレないようにね…」
「はいっ!」
それからの俺達は大忙しだった。
仕事の合間に抜け出す俺。
フォローする黒原さん。
訳も知らず、スケジュール通りに仕事をこなす満さん。
三者三様の時間を過ごしつつ、時は過ぎていった。
「はぁ…できましたぁ…」
「おっ、檸檬君、いいじゃないか!
これは店頭に置けるレベルだよ。
頑張ったねぇ…うんうん、いい出来だ。」
「皆さんのお陰です!
俺の我儘にお付き合い下さって本当にありがとうございました。
お礼の言いようもありません…」
口々に『いい出来だ』『頑張った』と言われて、不覚にも涙の幕が張ってきた。
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