188 / 371

内緒(18)

天国から地獄へ。まさにそんな感じだった。 「…黒原さん…どうしよう…」 「一度言い出したら覆すのは大変だからな。 …あれ?その紙袋…やっと出来上がったの? 凄いじゃん!」 「…ラッピングも教えてもらって、さっきまで絶好調だったんですよ… まさかこんなことになってるなんて… すぐに謝った方がいいですよね!? 俺、行ってきます!」 俺は急いで社長室のドアをノックした。 シーン 中にいるのに無視されている。 子供かっ!!! 「社長、お話がありますっ!」 何度もドアをノックするけれど、完全無視。 諦めて黒原さんの待つソファーに戻り掛けた時、内線が鳴った。 「はい黒原です。」 黒原さんがスピーカーに変えてくれた。 「執務に集中するから邪魔しないで。 遅くなるから、金山は黒原に送ってもらってくれ。」 ブチッ 「あらら…完全にキレてるねぇ… こうなったら手がつけられないよ。 俺がちゃんと説明しておけば良かったか… 檸檬君、ごめんね。」 「そんな…無茶をお願いしたのは俺なんですから、黒原さんのせいじゃないです! 本気で怒ってる…どうしよう…」 「外で何か嫌なことがあったんだろう。 それを檸檬君で癒そうとしたのに居なかった。 で、積もり積もって見逃してたことがプラスされて爆発したのかもね。 仕方ない。 今日はこのまま放っておこう。 帰りは俺が送るから、檸檬君は仕事の続きをしてくれる? 俺達は定時で上がろう。」 「…はい。」 だだ下がりのテンションで仕事をするけれど、ドアの向こうが気になって仕事が捗らない。 何でそんなに怒るかな。 確かに仕事を抜け出してた俺が悪いけど。 あんなに怒らなくってもいいじゃないか! 満さんのばかっ! せっかく喜んでもらおう、って俺なりに頑張ったのに。 1番喜んでもらいたいひとがこんなんじゃ…… デスクの上の紙袋が、悲しく佇んでいた。

ともだちにシェアしよう!