191 / 371
内緒(21)
お言葉に甘えて、そっとあちこち無遠慮に見て回る。
好きなとこ見てもいい、って言ってたよね…
遠慮しつつも興味津々、覗いてみる。
うちと同じ間取りだ。
そりゃそうか、階は違えど真下だもんね。
一人暮らしには広過ぎるだろうけれど、居心地が良いというのはすぐに分かった。
几帳面な黒原さんのこと。掃除もよく行き届いて無駄な物がない。
そうかといって物がないのではなく、必要な物が必要な場所にある、シンプルイズベストのお手本のような部屋だった。
黒原さん、車といい部屋の感じといい、北欧系が好みなんだろうか。
あとはこの部屋だけ…
半分開かれたドア。
ここは…きっと寝室だ。見てもいいのかな…
遠慮より好奇心が勝った。
ドアの隙間から覗き込んだ。
開かれたカーテンは濃いブルー。
それに合わせるようにベッドカバーも同じ色で…これはうちと同じ…キングサイズ!?ひとりで寝るには…大き過ぎる…やっぱり彼女さんと…うふっ。
その脇にヴィンテージっぽいオープンキャビネットが置いてあった。
何となくそれ以上その場に留まるのは憚られて、すぐに立ち去った。
何だか見てはいけない物を見てしまった気がして、ドキドキする。
キッチンからいい匂いがしてきた。
「探索終了した?」
「はい!遠慮なく拝見しました!
黒原さん、やっぱりマメですね。
俺、見習わなくっちゃ。」
「いやぁ、俺はテキトーだよ。
あ、そっちの皿出してくれる?そうそう、それ。3枚ね。」
「3枚?」
「きっと満が来る時間だよ。見ててごらん。」
黒原さんは笑いながら、サラダやパスタを綺麗に盛り付けていった。
その5分後――
ピンポーーーン
「あははっ、ほらね。はーい!」
インターホンに眉毛が八の字の満さんが写っていた。
1階じゃなくて部屋直のピンポン…
ともだちにシェアしよう!