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内緒(23)
満さんの大きな手に繋がれたままリビングに入って行くと、ぐい、と引っ張られて膝を跨いで座らされ、向かい合わせになった。
「俺はどうやらお前が絡むと冷静ではいられないみたいだ。
他のことはどうでもいいけど、ことお前のことになるとアンテナがびんびんに張り巡らされる。」
「…気付いてなかったんですか?
俺、いつも満さんの愛にぐるぐる巻きにされてますよ?」
「ははっ、マジか。
檸檬…嫌か?こんな俺に嫌気がさしたか?」
「…ふふっ、それを心地良く思う自分がおかしいです。
こんな俺…嫌ですか?」
「嫌なもんか!大歓迎だぞ!
で?何のために会社を抜け出して、何処で何をしていたんだ?」
ふぅ…ここまでバレてたら仕方がない。
俺は満さんの鼻先に、ちゅ、と軽いキスを贈ると、その腕から抜け出して紙袋を持ってきた。
「これを…本当は明日渡したかったんです。
1日早いけど『満さん、お誕生日おめでとうございます!』
健やかで実りのある一年になりますように。」
中から箱を1つ取り出して、目の前に差し出した。
「これを?俺に?」
「はい。お誕生日のプレゼントに…
すみれさんのお店の多恵子さん…実はjewelry half moonの新藤さんの娘さんだったんですけど…新藤さんのご好意で、職人さんにも手伝ってもらって、俺とお揃いで作ったんです。
毎日少しずつ手作りで…抜け出してたのはお店に通っていたからなんです。
就業中に申し訳ありませんでした。」
「そうだったのか…開けてもいい?」
「はい。」
リボンを外し包装紙を外していく満さんの顔が綻んでいく。
カポッ
「うわっ…綺麗だ…これを檸檬が!?売り物みたいだ!
石が二つ…ひょっとして、俺達の誕生石?
檸檬、ありがとう!最高のプレゼントだよ。
これ、つけてくれないか?」
「はい!」
両手で受け取って、今つけてるピンと交換する。
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