195 / 371

内緒(25)

はぁ…全く世話の焼ける… アレでも一応『代表取締役社長』ってご立派な肩書きの、泣く子も黙る金山家の当主なんだけど。 俺の前では、ちょっとヘタレで甘えん坊。 そのギャップに笑っちゃうこともあるんだけど。 そんな秘密も俺だけが知ってる内緒の話。 さーて…明日は何を作ったら喜んでくれるんだろう。 この間からレシピを考えてはいるものの、これ、といったものが思いつかなかった。 満さんは何でも『美味しい、美味しい!』と言って食べてくれるから… …やっぱり本人に直接聞くしかないか… 俺達にサプライズは向いてない、ということが今回のことで身に染みてよーーく分かったし。 よし!風呂から出たら聞いてみよう! 「…檸檬…上がったよ…」 心なしかしょぼくれた声がした。 ははっ。まだ凹んでるのか。 「満さん、明日何食べたいですか? 俺、下手くそだけど一生懸命作りますから、何でもリクエストにお答えしますっ!」 「ん…そうだな…1番食べたいのは、檸檬!」 「…それは…えーっと…応相談で…ゴニョゴニョ」 「ははっ。マジ!?じゃあ後で相談しよう。 そうだな…檸檬が作るものは何でも美味いからな。 俺はいつも美味いもの食べさせてもらってるから、何でもいいんだけど。」 「その『何でも』っていうのが1番困るんですっ! ピンポイントで『コレ』って言ってもらわないと…」 「そう?…そうだな…手巻き寿司!なんてどう? 檸檬に巻いてもらって…『あーん♡』なーんて、えへへっ」 「…満さん、良からぬ妄想は止めて下さいね… ま、分かりました。」 良かった、決まった。 『あーん』は別として…でもまぁ、誕生日だから、してあげてもいいか。 だって満さん、嬉しそうなんだもん。 「じゃあ、俺もお風呂入ってきます!」 俺を抱きしめようとした満さんが肩透かしを食ってフリーズしたのを横目に、俺はバスルームへ走って行ったのだった。

ともだちにシェアしよう!