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誕生日(1)

side:満 何か隠し事をされているのはすぐに分かった。 それも俊樹まで一緒になって。 仕事時間の調整をしてまで、何処に行って何をしているのか。 まさか、浮気!? いや、檸檬に限ってそんなことある訳がないのは分かっているんだけど。 俺を除け者にして、内緒で何かやっていることが気に入らない。 もう少し泳がせて追求してやろう。 そう思っていたが、今日久し振りに訪問した取引先の社長に、檸檬との結婚を揶揄われ(それもかなり悪意を感じた)、ムカついた。 『いやぁ、金山社長、あなたがソッチの方だってなんて… 相手が同性だから子供もできないじゃないですか。 あなたの代で会社を畳むことになるんですかねぇ。』 『いえ。私は性別関係なく心底惚れた相手と結婚できて本当に幸せですよ。 結婚しても子供のできない人達だっているじゃないですか。 うちはちゃんと後継者がいますから、お気遣いなく。 これから若い子達が会社を盛り立ててくれるので楽しみですよ。』 そう返したら、苦虫を潰したような顔をしていた。 ザマーミロ。 この会社、絶対に潰してやる。契約も全て切ってやる。新しい取引先を見つけないとな。 俊樹に伝えておかなければ。見てろよ、くそジジイ。 早く帰って檸檬を補充しなければ。 俺のかわいい檸檬を馬鹿にしやがって。 ぜってぇ許さない。 檸檬に会いたい。抱きしめてキスしたい。 『満さん、お帰りなさい』ってあの優しい声で囁いてほしい。 檸檬のあの爽やかな匂いを胸一杯に吸い込みたい。 あぁ、早く檸檬で満たされたい! それなのに。 それなのに。 檸檬がいない、ってどういうことだ!? 「あー、檸檬君はちょっとお使いで外出中なんです。 もう少ししたら戻りますよ。」 「こんな時間に“お使い”って何だ? 俊樹…何か隠してるだろ。」

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