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誕生日(5)

ピンポンダッシュさながら、インターホンを連打する。 「あー、もう、うるさい!」と愚痴る俊樹を押し除け開けられたドアに飛び込んで、玄関の檸檬の靴を確認した。 勝手知ったる俊樹の家。上がり込んでリビングにいた檸檬の前に立つと、腰を90度に折り頭を下げた。 「檸檬、ごめん!八つ当たりした! 俺が悪かった!許してくれ!ごめん!」 檸檬がオロオロしている。 一頻り謝る俺に、俊樹が声を掛けてくれ、テーブルに(いざな)われた。 ちゃんと3人分の食事の用意がしてあった。 湯気の立つ、出来立てのパスタ。 流石、俊樹。俺の行動を全部読んでる。 気不味い雰囲気の中、喋る俊樹と檸檬、黙りこくった俺。 よかった。 取り敢えず檸檬は怒ってはいないみたいだ。 お皿は全て空になった。 美味かった。腕を上げたな、俊樹。 アイツにも、こうやって手料理を振る舞ってるんだろうか。 片付けもしなくていいから、と2人まとめて俊樹に追い出された。 ため息をつく檸檬の手を握り、非常階段を登っていく。 檸檬の戸惑いが手から伝わる。 ええい、まどろっこしい。ドアの中に檸檬を押し込んだ。 ガチャ、カチャリ 後ろ手で鍵を掛け、覆い被さるように抱きしめた。 誤解が解けた。 俺の勝手な思い込みといじけた心のせいで、檸檬を傷付けてしまった。 檸檬、ごめん。悪かった。 心の狭い俺を許して。 玄関先では檸檬の話を聞いてやれない。 中に入ろう、と連れて行く。 リビングでソファーに座ると、向かい合わせになるように檸檬を抱きしめた。 何処で何をしていたのかを問うと、檸檬は俺の腕からするりと抜け出し、小さな紙袋を持ってきた。 「1日早いけれど」と差し出された小さな小さなリボンの掛かった箱を受け取る。 この大きさ…アクセサリーか? 買い物に行くくらいなら1日で終わるはずなのに…不思議に思っていると、檸檬のお手製だと知った。

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