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誕生日(6)

嘘だろ!?俺のためにわざわざ何日もかけて!? だから仕事に支障がないようにやりくりしていたのか。俊樹まで一緒になって…アイツも変に口が固いからな。 嬉しくて、リボンを解く顔がニヤけていくのが自分でも分かる。 蓋を開けると…中から出てきたのは、少し大きさの違う石が埋め込まれたネクタイピンだった。 あぁ、確かこの石は、俺と檸檬の誕生石だ! 早速付け替えてもらう。 うん、綺麗だ。デザインもいい。素人が作ったにしては完成度が高過ぎる。 元々手先の器用な檸檬だからこそできた物なんだろうな。 明日にでも新藤さんにお礼の電話をしておこう。 何?自分のも作ったって!? うんうん、これもいいな。店で売れるレベルだぞ!? それは俺が付けてやった。 俺達にはサプライズは不要だ。 盛り上がる手段としては有効なんだけど、俺達に限ってはそうじゃない。今回のことで、お互いによく分かった。 どんなことでもちゃんと話して伝え合って。 隠し事は無しだ。 俺達らしくそうやって進んでいけばいい。 今日は外で嫌なことでもあったのだろう、と檸檬が気を遣ってくれたのか、ハグしてきた。 「足りない」と告げると、少し強めに。 「まだだ」と言うと、バードキスをしてくれた。 調子に乗って催促すると、キスが2回降ってきたが、それ以上は断られた。 うーーぅ、檸檬が足りないのに。 甘えても嗜められて放置され、風呂に入れと叱られた。 その代わり、明日は……ふっふっふっ。言質(げんち)を取ったからな、檸檬、覚悟しておけよ。 2日間の休みを提案した俊樹に感謝せねばならんな。 あ、俺の休みも申請しておくか。 明日はきっちり働くけど、定時に帰ってそれからずっと檸檬と一緒に過ごしたいし。 こっそり俊樹宛にLINEを送った。 間髪入れず、OKのスタンプがきた。 策士黒原、流石いい仕事をする。

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