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誕生日(9)

「れもーん!おっはよぉーっ!」 ぎゅうっ 「ぐえっ」 急に後ろからハグされて吃驚して、お腹でクロスする手をバチンと叩いた。 「痛っ」 「おはようございます。 今、火を使ってるから危ないんです!離れて!」 手を摩りながら、ちょっと涙目の満さんがすごすごと離れた。 「…これでよし、と…満さん、何度言えば分かってもらえるんですか!? 火傷したり火事にでもなったらどうするんですか!?ホントに、もう…」 「ごめんって…」 満さんの顔を見てハッとした。 「…俺こそごめんなさい。強く叩き過ぎたし言い過ぎました。ごめんなさい…」 いくら吃驚したとはいえ、やり過ぎた…手を出したのも、キツい物の言い方をしたのも。 せっかくの誕生日の朝を…でも、でも何度言っても聞いてもらえなくて…いや、やり過ぎた。 満さんの手は、少し赤くなってた。 俺は急いでハンドタオルと保冷剤で満さんの手を包んだ。 「ごめんなさい。痛かったですよね? あっ!それより先に! 満さん、お誕生日おめでとうございます。 ごめんなさい、こんな誕生日の幕開けになっちゃって…ごめんなさい…」 今度は俺が落ち込む番だ。 満さんは笑いながら 「注意されてたことをやった俺が悪い。 ごめんな、檸檬。怪我しなかったか?」 このひとはやっぱり大人だ。俺ならこんなに素直に謝ることなんてできない。 あんなことしてきたのは、きっと俺に朝一番に甘えたかったに違いない。 それなのに俺は…… 俺は満さんをぎゅっ、と抱きしめた。 「檸檬!?」 「満さん、ゴメンナサイ…」 満さんは俺の背中を摩ると 「何度も『止めて』と言われてることをやった俺が悪いんだ。気を付けるから。 さ、ご飯にしよう。いい匂いがする。お腹空いたよ。」 と言って俺の手をやんわりと解くと、ご飯をよそいに行ってしまった。

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