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誕生日(14)
今日は、満さんが嬉しいことだけ、喜ぶことだけをしよう。
例えそれが無理難題だとしても。
うん、そうしよう!
そうと決まれば、先にケーキを焼くぞ。
シンプルな苺のショートケーキ。
この日のために、滅茶苦茶練習してきたんだ。絶対に上手く焼ける自信がある。
俺はレシピを確認すると、材料を測り始めた。
焼いている間に、苺を洗って丁寧に水気を拭き取りスライスする。
うんうん、いい感じ。
生クリームは7分立てがいいって、TVで言ってたからそのように。
スポンジの焼けるいい匂いがしてきた。
よしよし、順調順調。
そして……
「できた……完璧!」
超シンプルなケーキだけど、愛情は爆発的に入ってるよ。俺の手作り、って知ったらどんな反応するかな。
あ…もうこんな時間か…
さてさて、次は手巻き寿司の準備だ。
これはほぼ切るだけ盛り付けるだけだから、チャチャっとやってしまおう!
それと…満さんは薄揚げと豆腐の味噌汁が大好きだから、こっちの用意も!
朝の凹み加減は何処へやら。
俺は鼻歌交じりでどんどん仕上げていった。
「檸檬、良くやった!完璧だよ!偉いぞ!」
出来栄えに自画自賛して、自分を褒め散らかす。取り敢えず写メってみた。保存!
満さんからのメッセが何かあるかな、なんて朝から何度も何度も期待して見たけど、携帯は、今日一度も鳴らなかった。
少しの時間でも離れた日には、どんなに忙しくてもスタンプくらい送ってくれるのに。
やっぱり怒ってるのかな。
黒原さんからは『承知しました。何かあったら連絡するね。』って返信がきたのみ。
連絡がないということは大丈夫ってことだ、きっと。
きっとそうだ。そう信じよう。
後は……満さんを待つだけ。
満さん…俺、いい子で待ってるよ。
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