211 / 371
誕生日(16)
「セクハラって…何だよ、それ!?
…前々から、檸檬が俺にされて嫌なことがあってさ。」
「うんうん。」
「3つあるんだ。」
「はぁ!?3つもか!?サイテー…」
「五月蝿い!
1つは今朝のそれ。火を使ってる時に背後からの突然のハグはダメ。」
「そりゃそうだろ。火傷でもしたらどうするんだよ。」
「…分かってるよ。
2つ目は、檸檬が先に布団に入ってあったまってる時に、後から来た俺が檸檬に絡みついて、俺の冷えた足を檸檬にくっ付けること。」
「冬にそれやられたら殺意を抱くぞ。」
「それも分かってる!
3つ目は…ところ構わずあちこちにキスマークを残すこと。」
「はあっ…そりゃそうだろ!
満…俺、見て見ぬフリしてたけどさぁ…時々檸檬君の襟元から見えるんだよ、そのキスマーク!」
「あぁ!?見るなよ!檸檬が減るじゃないか!」
「アホか!減るかそんなもん!
俺だからいいけど、他の第三者が見つけたら何言われるか、たまったもんじゃねーぞ!
面と向かってお前に言わなくても、その矛先は檸檬君に向くぞ!」
ぐっ。俊樹の言う通りだ。
社長である俺には、直接誰も何も言わないだろう。
でも、ただでさえ同性婚を良く思わない輩が、俺の伴侶である檸檬には、誹謗中傷の嫌な態度を取るに違いない。
俺が黙っていると、俊樹は
「さっきの止めてほしい3つのこと、檸檬君が嫌がるのは無理もない。
俺でも嫌だ。」
「え…マジか…」
「だけど、満はそれをしたいんだろ?
じゃあやり方を変えればいい。」
「どうすればいいんだ!?俊樹、教えろ!」
「1つ目は、危なくなけりゃいいんだろ?
食器洗ってる時とか、後はひと声掛けて“ハグするぞ”アピールしてからにするとか。」
「なるほど。」
「2つ目は、足が冷える前に布団に潜り込むしかないな。
それか、あったまるまで布団の中で少し距離を置くしかない。」
俺の答えに満が唸り声を上げる。
ともだちにシェアしよう!