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誕生日(17)

「うーっ…すぐ檸檬に絡み付きたいんだよ…」 「春か秋ならいいけどな。夏は暑苦しいし、冬は厳禁だ。」 「床暖入れようかな…そうすれば足が冷えないだろ?」 「そのためだけにか!? あの機械って重いんじゃないのか?重量制限あるかもしれないからさ、マンションの管理会社に確認したほうがいいぞ。 それに大掛かりな工事になるなら、事前申請がいるぞ。」 「檸檬のためならそんなこと朝飯前だ。 すぐに電話する。」 「はいはい。電話は休憩時間にしてくれよ。 3つ目は……とにかく自重してくれ。 つけたい気持ちはよく分かるから、するな、とは言わない。 やるなら“見えないところ”にしろ。 だけど、定期検診や社内旅行の前なんかには絶対するなよ!」 「…分かったよ。気を付ける。」 「分かればよろしい。 さて、社長。定時きっかりに退社したいのでしたら、早速仕事に取り掛かりましょうか。」 俊樹はそう言うと、俺のデスクの上に書類を積み重ねた。 「各部署、皆、社長の承諾を待ってます。 さぁ、頑張りましょうか。」 鬼め。涼しい顔しやがって。 ううっ…定時に帰るためだ。我慢だ、我慢。 檸檬のためなら、エーンヤコーラ。 俺は物凄いスピードで仕事をこなしていった。 それを見ていた俊樹のひとり言も聞こえた。 『いつもこんなに仕事してくれればイイのに』 五月蝿い!頑張ってるじゃん、俺! くっそー。 俺は、家で朝の失態を引き摺ってきっと半ベソをかいている檸檬を思いながら、ただひたすら頭と手を動かしていた。 俊樹の言いつけを守って、昼休みに管理会社に電話して床暖の件を確認した。 …どうやら大丈夫らしい。 これで問題は一つ解決しそうだ。 早速教えてもらったいくつかの業者に見積りを頼んだ。 俊樹に得意気に伝えたら、何とも言えない顔をされた。何だ!?放っておけよ。

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