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誕生日(18)
午後からも、俺はよく頑張ったと思う。
3時のコーヒーブレイクにはほぼ終わっていたからな。
「俊樹、もし明日突発的なことが起こっても」
「ビルが爆発したとか、近隣が火事になって大変だとか、そういうことにならない限りは連絡はしませんよ。ご安心を。
馬に蹴られるようなことはしませんから。
どうぞ、ご・ゆっ・く・り。」
にやりと微笑む秘書俊樹。
「ついでですから、前倒しの仕事もやっておきましょうか。
まだお帰りまでには時間もたっぷりあるようですし。」
「ひっ。こんのドSがっ!」
「はいはい、何とでもどうぞ。」
流石に有能秘書。容赦ない。
逆らえない俺は渋々椅子に腰掛けると、俊樹から渡される書類に目を通していった。
檸檬…待っててくれ。俺は、俺はあと2時間程したらお前の元に駆けつけるからな!
そして………
「俊樹、あと頼んだぞ!じゃあな!」
「満、ちょっと待て!」
「何だよっ!仕事は終わらせたぞっ!」
「これ。」
???
手渡されたのは、白い封筒。訝しげに俊樹を見ると
「誕生日おめでとう。ささやかながら俺からのプレゼントだ。
良かったら使ってくれ。」
「えっ、何だろう…何か分からないけど、いいのか?…ありがとう。遠慮なくいただくよ。
じゃあ、あとのことは頼んだぞ!」
「はい、お疲れ様でした。」
ひらひらと手を振って、ダッシュでエレベーターの前へ走って行った。
ん?遅い…ヤバい…定時帰宅コースのラッシュ再来か!?
やっと来たエレベーターに乗り込むと、これまたワザとのようなぎゅうぎゅう詰めの各階停車。
「あっ、社長!お疲れ様です!」
「お疲れ様。いつもありがとう。」
そんなことを数度繰り返し…やっと1階へ。
この光景、つい最近もあったぞ…デジャヴだ…
運転席に滑り込んで漸く息を吐いた。
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