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誕生日(23)
俺は檸檬の頬を撫でながら言った。
「今までの誕生日の中で1番嬉しい日になった。ありがとう。
檸檬、ずっとずっとこうして祝ってくれ。
愛してるよ。」
俺の背中に回された檸檬の腕に力が入り、ぎゅ、と抱きしめられる。
俺の腕の中の天使は「満さん、大好き」と呟いた。
「俺もだ」と返して、暫く暗闇の音のない世界で2人抱き合っていた。
微かにケーキの甘い匂いと、俺を煽る檸檬の匂いがする。
ダメだ…我慢できなくなってくる…
「…満さん…ケーキ、美味しいうちに食べてほしい…」
「…ん、分かった。電気つけるぞ。」
「わ、眩しいっ。」
「凄いな…店で売ってるやつみたいだ。
檸檬は器用だから何でもできて羨ましいよ。」
「そんなことないですよ!
これだって相当練習したんですから!」
「そうなのか?…お前は見えないところで努力する頑張り屋さんだからな。
あまり根を詰め過ぎて身体を壊さないようにしてくれ。」
「…はい。」
「なぁ、食べさせてくれよ。」
「えっ!?」
「いいだろ?あーん。」
大きく口を開けて待つ俺に、檸檬は「小鳥の雛みたい」と呆れるフリをして照れながらも、カットしたケーキをフォークに刺し食べさせてくれた。
生クリームは甘過ぎずくどくなく、さっぱりとした甘さで、スポンジもふわふわだった。
「檸檬、これ美味い!俺も食べさせてやる。
ほら、あーん!」
はぁ、と盛大なため息をつき、上目遣いで俺を見る檸檬。
悪いな、欲望が止まらないよ。
クリームをたっぷり掬い取り、口の中に入れてやった。
「んむっ……ふふっ。手前味噌ですけど、美味しいっ!」
「うん、美味いな!」
いちゃいちゃと食べさせ合い、結局完食した。
「あーっ、美味かったぁー!檸檬、ありがとう。」
「くすくすっ。良かったぁ…」
「そうだ!これ、俊樹からのプレゼントなんだ。」
「え?何をいただいたんですか?」
「何とっ!温泉一泊!」
「えーっ!すごーーいっ!!…ん?一泊?」
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