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お楽しみはこれから(8)
チェックインを済ませ、案内された部屋は…おおっ、豪華だ!
「うわっ、凄いっ!満さんっ、見て見て!」
檸檬がそうはしゃぐ程に、竹藪に囲まれた離れの日本家屋は立派だった。
品のいい古びた感じの一軒家といったところか。
「俊樹のやつ、張り込みやがって。」
帰ったらお礼を言わなければ。
アイツの時には倍返しだな。
チケットを貰ってから、ネットでこの場所を検索してみて驚いた。
超有名な人気の離れ宿で、施設も従業員の応対も最高クラスの所だった。
なかなか予約が取れないらしいのだが、俊樹のことだ、何処かからツテを頼って予約してくれたんだろう。
仲居さんに心付けを渡して、ひと通りの説明を受ける。
他の部屋とは相当距離が離れているので、第三者の気配を感じることが皆無だ。
全く『山の中の隠れ家』というキャッチフレーズがぴったりだった。
必要なことがあれば、内線で全て足りるようだった。
「お食事は、ご指定のお時間通りに、渡り廊下の隣の部屋にご用意いたします。
では、ごゆっくりお過ごし下さいませ。」
男2人の、こんな離れ宿の宿泊にも全く顔色を変えないのは、流石プロだ。
檸檬は腰の痛みも吹っ飛んだんだろうか、あちこちを開けたり閉めたり、見て回っている。
ひと通り見終わって満足したのか、檸檬が俺の所にやって来た。
「満さん、ここ凄いよ!黒原さんにお礼言わなくっちゃ!
……でも、すっごくお高い所なんじゃないの!?」
俺は檸檬の頭をポンポンと撫でると
「その分、俊樹の時には倍にして返してやるから心配するな。
アイツの気持ちを喜んで貰っておこう。
仕事が詰まってて新婚旅行も先延ばしにしてしまっているからな、明日までのんびりさせてもらおう。」
檸檬は嬉しそうに頷いた。
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