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お楽しみはこれまで(1)

俺の分のデザートまで平らげた檸檬が、冷蔵庫を除いて気を利かせたのか聞いてきた。 「満さん、ビール?それとも熱燗? うーん…冷酒もあるし…やっぱりワイン? あっ、チーズもある!」 「そうだな…檸檬と飲みたいからワインにしようか。」 檸檬は華やかな顔立ちに似合わず、アルコールに弱い。 檸檬曰く『ビールは苦くて日本酒は辛い。ワインなら少しは飲めます!』 飲み過ぎるとすぐに酔っ払って寝てしまうから、酒量をセーブして管理しとかなくちゃ。 酔い潰れたら、今夜のお楽しみが…… 俺の不埒な思惑を秘めたまま、冷えたワイングラスに、檸檬の分は少し控えめに注いでやる。 「檸檬、飲み過ぎないようにな。」 「分かってますっ! 満さん、改めて…お誕生日おめでとうございます!」 カチン 少し酸味の効いた甘い液体が喉を通っていく。 これは美味い。 「美味しいっ!」 あっ、と思った時には、檸檬のグラスが空になっていた。 「満さん、これ、凄く飲みやすいですね。 俺、好きです。ジュースみたい。おかわり!」 「あっ、ばかっ!一気飲みする奴が何処にいるんだ!? ただでさえアルコールに弱いのに、そんな飲み方をしたら」 檸檬は俺の言葉を遮り、手酌で自分のグラスに注ぐと、またくいっと飲み干した。 「あはっ。美味しーい! ほら、満さんも飲んでぇ!」 むふむふと嬉しそうな檸檬。 ヤバい予感がする。 檸檬の頬は上気し、目はとろんと焦点が合わなくなってきた。 「檸檬?大丈夫か?」 「えへへっ、何だか気持ちいーぃ! 身体がほわほわしてるぅ。 うふん、満さん、だぁーいすきぃ!」 あー…:酔っ払いの完成か… それでも、俺の腕にしなだれかかってくるこの重さが堪らなく気持ちイイ。 「檸檬、もう飲み過ぎだぞ。」 「やだ。これ美味しいもん。」 グラスを持ったまま離さなくなった。

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